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原発の再稼働は国益だろうか?再稼働を目指して進んでいる現状を考える


 
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【原発の発電コスト】原発の電力、風力より高い 太陽光とも同レベル 米企業系調査機関が試算(2014.9.17)

原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。

 東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。2004年の日本政府による試算では、原発発電コストは1キロワット時当たり5・9円だった。

 BNEFは、原子力やバイオマス、地熱、水力など23の発電手法について、14年上期時点の世界各国の設備費、燃料費、資金調達に必要な債務費などを調べ、施設の耐用年数などでならしたコストを算出した。

 炉心溶融などの深刻な事故を防ぐための対策強化が求められるようになった結果、原発の発電コストは近年上昇しており、設備利用率を92%と高く見積もっても1キロワット時当たり14セントとなった。

 地熱(同6・5セント)、小水力発電(同7・7セント)、陸上風力(同8・2セント)などの再生可能エネルギーに比べてかなり割高だった。石炭火力は9・1セント、天然ガス火力は8・2セントだった。

 原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含んでいない。

 太陽光発電は近年、発電コストが下がって14・9セントとなっている。日本では、海外に比べ高価な国内製機器が使われることから32・9セントと高いが、BNEFは「安価な輸入品機器の利用拡大で、コストは低下傾向にある」としている。風力発電も日本は機器コストが高く、稼働率が欧米に比べて低いため、19セントと割高だった。

 BNEFは、米国大手情報サービス企業「ブルームバーグ」の傘下。

原発の発電コスト  日本の原発の発電コストは2004年の政府の審議会の試算で1キロワット時当たり5・3円とされ、他の電源に比べて有利だとされてきた。だが、東京電力福島第1原発事故後に政府の「コスト等検証委員会」で見直しが行われ、事故対策費などを含めると最低でも同8・9円と試算された。今回のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析は、同委員会の試算手法とは異なり、事故対策費用などは含んでいない。ーーー共同通信(2014.9.17)





脱原子力を選択したドイツの現状と課題(27.6.26)

■熊谷徹(在独ジャーナリスト)

 ドイツのアンゲラ・メルケル首相は、今年3月に日本を訪れる直前にネット上に発表したインタビューの中で、「ドイツは再生可能エネルギー拡大の道を歩んでいる。日本にもそうなってほしい」と述べた。
写真・図版
「誰が福島の責任をとることができるのか」と書いたプラカードを持ってデモ行進する参加者=2011年3月26日、ベルリン

 ドイツは、2011年に発生した、東京電力・福島第一原子力発電所の炉心溶融事故をきっかけに、エネルギー政策を根本的に変えた。世界中で、ドイツほど福島事故の教訓を真剣に自国にあてはめ、政策を大幅に転換させた国は一つもない。

 私は1990年からドイツを拠点にして、エネルギー問題を取材・執筆活動のテーマの一つとしてきたが、福島事故直後にこの国が見せた劇的な展開には驚かされた。もともと原子力擁護派だったメルケル首相が、福島事故の映像を見て原子力批判派に「転向」し、東日本大震災からわずか4カ月後には、原子力発電所を2022年末までに全廃することを法制化したのである。

 「日本と同じように天然資源が少ない物づくり大国ドイツは、本当に原子力発電をやめても大丈夫なのか」「ドイツが方針を変更して、原発を再稼働することはあり得ないのか」。私は、多くの日本人からこうした質問を受ける。

 私は2014年11月末に、ミュンヘン工科大学でドイツ技術アカデミー(ACATECH)などが開いたエネルギー転換に関する国際シンポジウムに参加した。この際にドイツ鉱業・化学・エネルギー産業労働組合(IG BCE)のラルフ・バーテルス氏に「今後どのような事態が起きれば、ドイツは原発全廃政策を取り下げるだろうか」という挑発的な質問をしてみた。IG BCEは、電力の大口消費者の利益を代表してエネルギー・コストの抑制を求めるとともに、エネルギー業界の雇用を守ることを任務としている。

 この産業別組合でエネルギー転換についての政策提言を担当するバーテルス氏は、「原発回帰はあり得ない」と断言した。「議会制民主主義に基づくこの国で、過半数を占める市民が原発全廃を支持しているのだから、そうした世論に逆行する政党は敗北するだけだ」と指摘した。

 確かに現在のドイツでは、原子力発電の復活を要求する政党や報道機関は、一つもない。「再生可能エネルギーの拡大のために電力料金が高騰しているから、2022年以降も原子力発電所を使い続けるべきだ」という意見も聞いたことはない。日本とは異なり、ドイツはエネルギー政策のぶれを見せていない。原子力の発電比率ゼロ、再生可能エネルギーの発電比率80%の社会へ向けて、まっすぐに突き進んでいる。現時点では、政界、経済界、報道機関を含めて、脱原子力についての国民的な合意ができあがっているのだ。

■7基の原子炉を即時停止

 2011年3月11日以降、ドイツの新聞とテレビは日本で起きた地震と津波、そして原発事故のニュースで埋め尽くされた。福島事故に関するドイツのメディアの報道は、当初から日本よりもはるかに悲観的だった。翌日の3月12日には公共放送局が「最悪の場合、炉心溶融が起き、チェルノブイリ並みの事故になる」という原子力発電の専門家のコメントを流していた。

 1986年のチェルノブイリ事故で放出された放射性物質は、ドイツ南部を中心に土壌や農産物、野生動物を汚染した。この時の恐怖感は、市民の心に深く刻み込まれている。このため、ドイツは福島から1万キロメートルも離れているにもかかわらず、メディアの報道によって市民の間に不安感が高まった。ヨウ素剤や線量計を買い求める市民が続出した。

 メルケル政権は、迅速に行動した。事故発生から4日後、連邦政府は3カ月にわたる「原子力モラトリアム」を発令。当時ドイツには17基の原子炉があったが、政府は全ての原子炉の安全点検を命じた。地方分権が進んでいるドイツでは、個々の原子炉の運転の許認可権を、州政府の原子力規制官庁が持っている。原子力発電所がある州の政府は、連邦政府の意を受けて、1980年以前に運転を開始した7基の原子炉を即時停止させた。これらの原子炉と、2007年以来変圧器火災のため止まっていた1基の原子炉は、モラトリアム終了後も再稼働することなく廃炉処分となった。メルケル政権は前年に電力業界の要請を受け入れて、原子炉の稼働年数を平均12年間延長することを決めていたが、この措置も凍結した。

■メルケル首相の告白

 メルケル氏は、「原子力発電所を安全に運転させることができるかどうかについて、首相として責任が持てない」と語り、脱原子力へ向けて大きく舵(かじ)を切った。彼女は、日本から送られてきた福島事故の映像を見て、「自分の原子力についての考え方が楽観的すぎたことを悟った」と告白した。

 メルケル氏の考え方は、2011年6月9日に連邦議会で行った演説にはっきり表れている。

   

 「(前略)福島事故は、全世界にとって強烈な一撃でした。この事故は私個人にとっても、強い衝撃を与えました。大災害に襲われた福島第一原発で、人々が事態がさらに悪化するのを防ぐために、海水を注入して原子炉を冷却しようとしていると聞いて、私は“日本ほど技術水準が高い国も、原子力のリスクを安全に制御することはできない”ということを理解しました。

 新しい知見を得たら、必要な対応を行うために新しい評価を行わなくてはなりません。私は、次のようなリスク評価を新たに行いました。原子力の残余のリスク(筆者注・一定の被害想定に基づいて、様々な安全措置、防護措置を講じても、完全になくすことができないリスク)は、人間に推定できる限り絶対に起こらないと確信を持てる場合のみ、受け入れることができます。

 しかしその残余リスクが実際に原子炉事故につながった場合、被害は空間的・時間的に甚大かつ広範囲に及び、他の全てのエネルギー源のリスクを大幅に上回ります。私は福島事故の前には、原子力の残余のリスクを受け入れていました。高い安全水準を持ったハイテク国家では、残余のリスクが現実の事故につながることはないと確信していたからです。しかし、今やその事故が現実に起こってしまいました。

 確かに、日本で起きたような大地震や巨大津波は、ドイツでは絶対に起こらないでしょう。しかしそのことは、問題の核心ではありません。福島事故が我々に突きつけている最も重要な問題は、リスクの想定と、事故の確率分析をどの程度信頼できるのかという点です。なぜならば、これらの分析は、我々政治家がドイツにとってどのエネルギー源が安全で、価格が高すぎず、環境に対する悪影響が少ないかを判断するための基礎となるからです。

 私があえて強調したいことがあります。私は去年秋に発表した長期エネルギー戦略の中で、原子炉の稼働年数を延長させました。しかし私は今日、この連邦議会の議場ではっきりと申し上げます。福島事故は原子力についての私の態度を変えたのです。(後略)」

   

 この演説は、物理学者・政治家メルケル氏にとって一種の「敗北宣言」だった。彼女は「以前の自分の考えは誤っていた」と、居並ぶ国会議員、そして国民の前ではっきり認めたのだ。ドイツ社会では、意見を大きく変えることは、好ましい評価を受けない。それまでの考えが浅かったことを、暴露することになるからだ。したがって、一国の首相がこれほど率直に「自分の考えが誤っていた」と公言するのは、珍しい。通常は、様々な理由を挙げて、なぜ自分が別の考えを持っていたのかを正当化しようとするものだ。だが彼女は一時科学者として働いた人間らしく、弁解することはせず、己の知覚能力、想定能力に限界があったことを正直に告白したのである。

■緑の党なしに脱原子力はあり得なかった

 だが、メルケル氏が脱原子力に踏み切ったもう一つの理由は、この国の政治力学だった。

 当時メルケル氏は保守政党キリスト教民主同盟(CDU)、キリスト教社会同盟(CSU)、自由民主党(FDP)からなる保守中道連立政権を率いていた。これらの党はいずれも原子力擁護派だった。社会主義時代の東ドイツで、メルケル首相は物理学の研究者として働いていた。このため放射線についての基礎知識も持っており、ドイツ統一後にCDUの政治家になってからも、原子力発電については好意的だった。福島事故の前年には原子力発電のロビー団体の会合で演説し、「再生可能エネルギーが普及するまでのつなぎとして、原子力は重要だ」と語っていた。

 一方、当時の連邦議会で野党だった社会民主党(SPD)と緑の党は、原子力に批判的だった。

 さて福島事故の発生後にメルケルが懸念したのは、この事故の影響で野党への支持率が増えることだった。実際、3月26日にはベルリンやミュンヘンで25万人の市民が反原発デモに参加し、原子力発電に反対する機運が高まっていた。

 首相の懸念は、現実のものになった。3月27日、つまり福島事故の約2週間後にドイツ南西部のバーデン・ヴュルテンベルグ州で行われた州議会選挙で、原発擁護派だったCDUの首相が敗退し、環境保護政党・緑の党が圧勝したのである。同党は、SPDと連立して政権を樹立。CDUが58年間にわたって首相の座を独占してきた同州で、初めて緑の党の首相が誕生した。これは日本で言えば、保守王国新潟県で、共産党の知事に誕生するような、革命的な事態である。世界有数の自動車メーカーや化学メーカーの本社があるバーデン・ヴュルテンベルグ州は、ドイツの物づくりの中心地の一つで、電力需要の約50%を原子力でまかなってきた。

 CDUが惨敗した理由は、二つある。一つはシュツットガルト駅の改修工事についての市民の反対運動に、州政府が高圧的な態度で臨んだこと。もう一つは、福島事故が引き金となった反原子力運動の高まりだった。ある有権者は、ラジオ局とのインタビューで「私はCDUに30年間投票してきたが、福島の事故を見て、自分がだまされていたことに気づいた。今回初めて緑の党を選んだ」と語った。

 この選挙結果を見て、メルケル氏は「原子力に固執していたら、緑の党とSPDに大量の票を奪われる」と懸念した。これ以降、メルケル氏が率いるCDUだけでなく、CSU、FDPも脱原子力へ向けて舵を切った。全ての保守政党が、緑の党と同じ政策を取るようになったのだ。メルケル政権は、2022年末までに全ての原発を停止させることを決定。連邦議会と連邦参議院は2011年7月8日までに、脱原子力法案を圧倒的多数で可決した。ドイツは福島事故が発生してから4カ月足らずで、原子力時代にピリオドを打つことを決めたのだ。

 西ドイツは、日本と異なり、1970年代から原子力発電について国を二分する論争を行ってきた。その中で決定的な役割を果たしたのが、緑の党だ。同党は、1980年の結党以来、脱原子力を求めてきた唯一の政党である(SPDは、チェルノブイリ事故が起きるまでは、原子力発電を擁護していた)。脱原子力政策そのものも、メルケルが生んだものではなく、緑の党の落とし子だ。

 同党は、1998年にSPDのゲアハルト・シュレーダー首相が率いる左派連立政権に参加し、環境相を担当した。そして2000年に、電力会社との間で原子炉の最長稼働年数を32年に限る「脱原子力合意」を成立させ、2002年に法律を施行させた。同時に、再生可能エネルギーを拡大させるための法律も施行させた。シュレーダー政権の脱原子力法は、全ての原発を停止させる時期を明記していなかったものの、ドイツの歴史で初めて原発全廃を法制化したことの意義は大きい。

 したがって私は、緑の党がこの国で一時期政権に加わるほどの政治勢力になったことが、ドイツが脱原子力を実現する上で、極めて重要だったと考えている。もしもドイツの緑の党が、隣国フランスにおけるような弱小政党だったら、今でも脱原子力政策は実現していないだろう。

■倫理委員会の提言を尊重したメルケル

 もう一つ興味深い点は、メルケル氏が脱原子力を決定する際に、原子力発電の専門家だけではなく、原子力のプロではない知識人たちにも提言を行わせたことだ。

 メルケル氏は福島事故が起きると、まず原子炉安全委員会(RSK)に、国内の全原発について、いわゆる「ストレス・テスト」を実施させた。これは、原発が洪水や全交流電源停止、テロ攻撃などに耐えられるかどうかを検証するものだ。RSKは、原子力発電の専門家らが構成する技術者集団である。この委員会は、ストレス・テストの結果「ドイツの原発には、停電と洪水について、福島第一原発よりも高い安全措置が講じられている」と述べ、「原発を直ちに止めなくてはならないという、技術的な理由はない」という結論に達した。

 同時にメルケル首相は、哲学者、社会学者、教会関係者ら17人の知識人からなる「倫理委員会」を設置し、文明論的な立場から長期的なエネルギー政策についての提言を作成させた。委員には『危険社会』などの著書で知られる社会学者ウルリヒ・ベック氏や、カトリック教会、プロテスタント教会の幹部ら原子力発電に批判的な人々が多く加わっていた。公聴会では大手電力会社の社長などエネルギー業界の専門家も発言の場を与えられたが、提言書を執筆した委員には、原子力技術のプロや電力業界関係者は一人も加わっていない。委員会の構成には、福島事故後、メルケル氏が原発についての技術者のリスク分析に不信感を抱いていたことが表れている。

 倫理委員会は、RSKとは対照的に、原子力に対して否定的な態度を打ち出す。「福島事故は、原発の安全性について、専門家の判断に対する国民の信頼を揺るがした。このため市民は、“制御不可能な大事故の可能性とどう取り組むか”という問題への解答を、もはや専門家に任せることは出来ない」と述べ、原子力技術者に対する不信感をあらわにした。

 そして「原子炉事故が最悪の場合にどのような結果を生むかは、まだわかっていないし、全体像をつかむことは不可能だ。原子炉事故の影響を、空間的、時間的、社会的に限定することはできない」と指摘。潜在的な被害の大きさのゆえに、伝統的なリスク分析の手法を、原子炉事故に使用することはできないと警告している。

 メルケル氏を始めとして、多くのドイツ人は日本について「あらゆる事態について準備を整えたハイテクノロジー大国」という先入観を抱いていた。彼らは「チェルノブイリ事故は、社会主義国だから起きた。西側先進国では、あのような事故は起こり得ない」というドイツの原子力業界の主張を信用していた。だが福島事故は、その原子力神話を打ち砕き、「日本のようなハイテク大国ですら、過酷事故が起こり得る」という現実を突きつけた。そして倫理委員会は、原子炉事故の被害を除去するのに多額の費用がかかることを考えれば、同じ費用を太陽光や風力エネルギーの拡大にあてる方が賢明だと指摘した。

 倫理委員会は、2カ月の討議の結果2021年までに原発を廃止し、よりリスクの少ないエネルギー源で代替することを政府に提言した。メルケル政権は、この提言をほぼ完全に受け入れて、法案を作成した。

 倫理委員会の設置は、福島事故以降のドイツ政府のエネルギー政策の決定過程の中で、最も興味深い一章である。メルケル氏は、原子力事故が起きた場合には、多くの市民が影響を受けるので、原子力を使い続けるべきか否かについての判断を、技術者だけに任せてはならないと考えたのだ。そして原子力のプロよりも、市民の意見を尊重した。これは、ドイツ人の民主主義に関する考え方が日本とは異なることを浮き彫りにしている。

■再生可能エネルギー拡大のコスト増大

 脱原子力は、ドイツのエネルギー転換政策の柱の一つにすぎない。再生可能エネルギー拡大と省エネルギーも極めて重要である。2014年の再生可能エネルギー(水力を含む)の発電比率は、25.8%。原子力(15.9%)に大きく水をあけた。2013年までは、褐炭による火力発電の比率が最大だったが、2014年には初めて再生可能エネルギーの比率が、褐炭を追い抜いて最大となった。

 メルケル政権は、再生可能エネルギー促進法(EEG)の中で、再生可能エネルギーの比率を2025年までに40~45%、2035年までに55~60%まで引き上げることを目標として明記している。2050年までには、80%に引き上げる。

 だが、原子力を代替するための再生可能エネルギーの拡大と同時に、電力料金が上昇していることも事実だ。ドイツ水道・エネルギー連邦連合会(BDEW)によると、年間消費電力が3500キロワット時の標準世帯の1カ月の平均電力料金は、1998年から2013年までに約68%上昇した。電力料金の中に再生可能エネルギー拡大のための賦課金、電力税などの税金が占める比率は、1998年には24.5%だったが、自然エネルギー拡大政策のために年々増え続け、2010年には50.2%に達した。つまりドイツの電気代の半分が、国のエネルギー政策・環境政策に基づく税金や賦課金なのだ。

 ドイツで1世帯あたりが毎年負担するEEG賦課金の額は、2014年の時点で266ユーロ(3万7240円・1ユーロ=140円換算)。過去4年間で、351%増加した。

 私は、1990年以来、ドイツの電力消費者である。2014年には、約3000キロワット時の電力を使い、約847ユーロ(11万8580円)の電気代を払った。この国の電力市場はEUの指令に基づき、1998年以来完全に自由化されている。しかし再生可能エネルギー賦課金の増加などのために、自由化による電力料金の値下げ効果は相殺されてしまい、全く感じられない。

 ドイツでは、送電事業者は需要の有無にかかわらず、再生可能エネルギーによる電力を買い取って送電網に送り込むことを義務づけられている。買い取りのための資金は、消費者が毎月の電力料金に上乗せされた賦課金として負担する。2014年に消費者が払った賦課金(EEG助成金)の総額は、236億ユーロ(3兆3040億円)に達する。14年間で26倍の増加である。

■メルケル政権、再生可能エネルギー促進法を改革

 特に2010年以降は、新設される太陽光発電装置の数が増えたために、電力1キロワット時あたりのEEG助成金の額が急増した。2011年には72%、2013年には47%も増えている。このため、2012年の夏以降、消費者団体や産業界がメルケル政権に対して「助成金の伸び率に歯止めをかけるべきだ」と要望した。電気代の値上がりは、特に低所得者層にとって大きな負担となる。ヴェストファーレン高等専門学校のハインツ・ボントルプ教授は、可処分所得の中に電力料金の占める比率が5%以上である世帯を、「電力のために貧困に拍車がかかっている世帯」と定義している。教授によると、「電力貧困世帯」に属する市民の数は、過去15年間に170万人増えて、500万人になった。

 特に皺(しわ)寄せを受けているのが、失業しているか、就業していても給料が低すぎるために国の援助金を受けて生活している約350万人の市民だ。2012年に電気代の滞納のために一時的に電気を止められた世帯の数は、32万2000世帯にのぼる。

 またドイツの大口需要家向けの電力価格は、EUの28カ国の中で、5番目に高い。フランスの約2倍である。このためドイツの産業界、特に電力を大量に消費する化学業界、製鉄業界、非鉄金属業界は「これ以上電力コストが高くなると、製造施設をドイツから外国へ移す企業が増えるので、雇用に悪影響が及ぶ」と主張。2012年秋以降、再生可能エネルギー助成金の伸びに歯止めをかけるよう、メルケル政権に強く要求した。

 このため、メルケル政権は2013年春に再生可能エネルギー促進法の改革作業に着手。2014年4月に改革法案を発表し、議会を通過させた。この改革によって、政府は再生可能エネルギーの1キロワット時あたりの法定買い取り価格を、平均17セントから12セントに削減。また太陽光発電の新規設置容量を毎年2.5ギガワットに抑えるなど、上限を設定した。助成を太陽光と風力に集中させ、過剰な助成を減らす。

 さらに、これまで以上に市場メカニズムを取り入れる工夫もなされた。たとえば再生可能エネルギーによる電力の内、法定価格による買い取り制度ではなく、電力市場で直接販売する部分を徐々に拡大する。2016年以降は、メガソーラーの助成金を法律ではなく、競争入札によって決定する。

 ドイツのEEG助成金は、日本と異なり、法定買い取り価格と市場価格の差を補塡(ほてん)する。したがって、再生可能エネルギーの普及によって市場価格が下がれば下がるほど、EEG助成金が増えるという構造上の矛盾点がある。したがって今後の市場価格の動向によっては、今後もEEG助成金が政府の思惑どおりに減るとは限らない。それでも、メルケル政権は今回の改革によって、少なくとも助成金の伸び率にブレーキをかけることをめざしている。

 興味深いのは、2012年から2014年にかけて行われた、再生可能エネルギー助成金の抑制をめぐる議論の中で、政党や経済学者、消費者団体、産業界から「エネルギー・コストを引き下げるために、原子力発電所を再稼働させるべきだ」という意見は全く出なかったことだ。最も先鋭的なEEG批判派の主張ですら、「法定固定価格による買い取りを廃止し、市場メカニズムに任せるべきだ」というものだった。つまり、自然エネルギーを拡大するためのコストをいかに減らすかという議論の中で、「原子力回帰」は選択肢の中には入っていないのだ。これも、ドイツが「ポスト原子力時代」にあることを浮き彫りにする事実だ。

■送電線拡充の大幅な遅れ

 もちろん、脱原子力と再生可能エネルギー拡大には、コスト増大以外にも、いくつかの問題点が残っている。まず送電線の建設が遅れていることだ。ドイツでは、陸上風力発電装置が北部に多い。また現在バルト海や北海では、洋上風力発電基地の建設が進んでいる。しかし電力の大消費地は、南部のバイエルン州やバーデン・ヴュルテンベルグ州なので、北部で作られた電力を南部へ送るための、高圧送電線(電力アウトバーン)を建設しなくてはならない。このため2013年6月に連邦参議院は、2022年までに全長2800キロメートルの送電線を新設するための法案を可決した。ところが、送電線が通る地域の住民たちが、景観の破壊や不動産価格の下落を理由に、反対運動を起こしている。さらにバイエルン州政府も住民の抗議に同調し、今年2月に「ドイツ北部からバイエルン州へ電力を送るための高圧送電線2ルートのうち、1ルートは不要だ」という見解を発表し、メルケル政権に対し計画の見直しを迫った。連邦政府は、住民の理解を得るために送電線の一部を地中に埋設することを検討しているが、建設コストは大幅に増える見通しだ。

 住民やバイエルン州の反対によって、送電線の建設は大幅に遅れている。たとえば、2009年に建設が決まったある送電線では、1877キロメートルのうち、2014年9月の時点で完成しているのは、わずか438キロメートル。全体の23%にすぎない。2016年末の時点でも、完成するのは建設計画の約40%にとどまると予想されている。

 バイエルン州やバーデン・ヴュルテンベルグ州は、福島事故が起きるまで電力需要のほぼ半分を原子力でまかなっていた。風力発電装置の建設は、北部に比べると進んでいない。さらにこれらの地域では、今後大きな出力を持つ原子力発電所が次々に停止していく。このため電力業界では、「ドイツの南北を結ぶ高圧送電網の建設が遅れた場合、電力需要が高まる冬季に、電力不足が起こる危険がある」と懸念する声もある。

■原子力による電力輸入の矛盾

 私は日本でドイツのエネルギー転換について講演をするたびに、聴衆から「ドイツは脱原子力を決めたと言いながら、フランスやチェコから原子力による電力を輸入している。矛盾ではないか」という質問を受ける。

 ドイツは、原子力モラトリアムによって一度に7基の原発を止めた2011年も含めて、外国への電力輸出量が外国からの輸入量を上回る「純輸出国」である。近年では、再生可能エネルギーによる電力の輸出量が増えていることから、輸出量と輸入量の差、つまり純輸出量は増える一方だ。2012年には、22.8テラワット時の出超だったが、2013年には45%増えて33.1テラワット時の出超となった。

 しかし国別に見てみると、ドイツがフランスやチェコから輸入する電力は、これらの国に輸出する電力を上回っており、「入超」となっている。

 欧州では、国境を越えた電力取引は日常茶飯事だ。EUは、域内に単一の電力市場を創設することをめざしており、今後は電力の輸出入がさらに活発になる。

 こうした中でドイツがフランスに対して「あなたの国の電力の75%は原子力で作られているので、輸入したくない」と電力の輸入を拒否することは難しい。また電力を、「原子力から作られた電力」と「風力によって作られた電力」に分けることは、物理的に不可能である。さらに、エネルギー政策は各国の安全保障にもかかわる問題なので、ドイツ政府がフランス政府に「原子力の発電比率を下げて欲しい」と要求することもできない。

 したがって、ドイツがフランスやチェコから原子力による電力を輸入していることは事実だが、ドイツがそうした電力を国内に入れないようにすることは、事実上不可能だ。そこでドイツは、自ら決定できる自国のエネルギー・ミックスから原子力を排除することを決めたのだ。「隗(かい)より始めよ」というわけである。

 いずれにせよ、これはドイツのエネルギー転換の中の「不都合な真実」の一つであり、同国のメディアも大きく取り上げていない。

■脱原子力をめぐる訴訟多発

 脱原子力をめぐって、納税者への負担を増やす可能性を秘めているのが、電力会社の訴訟である。福島事故の直後に原子炉を停止させられた大手電力会社4社(エーオン、RWE、バッテンフォール、ENBW)は、連邦政府や州政府を相手取り、8件の損害賠償訴訟、違憲訴訟行政訴訟を起こしている。このうち、「政府の一方的な原子炉停止命令によって、憲法が保障する財産権を侵害された上、経済損害を受けた」として、4社が求めている損害賠償額は、少なくとも53億ユーロ(7420億円)に達する見通しだ。

 福島事故直後の原子炉停止のために、エーオンとENBWでは2011年度の決算が赤字となったほか、残りの2社の業績も大幅に悪化した。

 これらの訴訟のうち、RWEがヘッセン州政府を相手取り、「州政府が電力会社の意見を聴取しないまま、ビブリス原子炉を3カ月にわたり停止させたのは、行政手続き法に違反する」と訴えていた行政訴訟では、電力会社が勝訴した。このため法曹関係者の間では、「福島事故は、ドイツの原発を即時停止させる理由としては薄弱だった。電力会社違憲訴訟や損害賠償訴訟でも勝つ可能性がある」という見方が浮上している。連邦政府や州政府が多額の賠償金を支払うことになった場合、結局は納税者が脱原子力のコストを負担することになる。連邦憲法裁判所での違憲訴訟の審理は、今年秋にも始まる予定だ。

■最大手エネルギー企業が原子力事業を分離

 最近日本の保守系メディアの間では、「ドイツの脱原子力政策や再生可能エネルギー拡大は、コスト高騰のため、失敗に終わった」という記事が見られる。確かにドイツの再生可能エネルギー拡大政策では、2012年になるまでコストに関する議論が真剣に行われてこなかった。その理由の一つは、再生可能エネルギー拡大が経済的な理由ではなく、2000年にシュレーダー政権に参加していた緑の党の、エコロジー重視のエネルギー政策に基づいて実施されたからだ。

 つまり、再生可能エネルギー拡大は、緑の党の政治的イデオロギーの産物である。当時私は、連邦環境省再生可能エネルギー拡大を担当していた緑の党に属する課長をインタビューしたことがある。彼は「我々の目的は、エネルギーの消費を減らすために、エネルギーのコストをあえて高くすることだ」と語った。つまり、緑の党にとっては再生可能エネルギーの拡大が、国民経済へのコストを増やすことは、織り込み済みだったのである。このことは、日本ではあまり理解されていない。

 また、ドイツの経済学者からは「ドイツのように日照時間が短い国で、太陽光発電を助成するのはナンセンスだ」という意見が強かった。確かに、EEG助成金のおよそ半分は太陽光発電に投入されているのだが、太陽光の発電比率は、2014年の時点で5.8%にすぎない。これは、非効率だと言わざるを得ない。

 それでも、ドイツでエネルギー転換を定点観測している私に言わせれば、「ドイツの再生可能エネルギー拡大は、コスト高騰のため、失敗に終わった」という主張は、完全な誤りだ。そのことを示す一つの例を挙げよう。

 2014年11月30日夜。ドイツ人たちは最初の待降節(アドベント)を迎え、静かにクリスマス・シーズンの到来を祝っていた。そこへ、青天のへきれきのようなニュースが飛び込んできた。

 デュッセルドルフに本社を持つドイツ最大のエネルギー企業エーオンが、原子力発電と褐炭、石炭などによる火力発電事業を切り離して、別会社に担当させると発表したのだ。本社は、再生可能エネルギーなど新しいビジネスモデルに特化する。このニュースは、ドイツのエネルギー業界だけでなく、ヨーロッパの経済界全体に衝撃を与えた。

 人々を驚かせたのは、今回発表された機構改革が極めて大規模で、エーオンという巨大企業を根本から塗り替えることだ。同社は、基本的に二つに分割される。エーオンの社員数は現在6万人。そのうち4万人は本社に残って、再生可能エネルギー、新時代の送電網ビジネスである通称「スマート・グリッド」、そして分散型の発電に関する顧客サービスを担当する。

 残りの2万人は、新会社に移って原子力発電と褐炭、石炭、天然ガスによる火力発電、水力発電事業を担当する。新会社の株式の大半は、現在のエーオンの株主が所有するが、一部は株式市場で販売する。大企業が不採算部門を切り離す時などに使う「スピン・オフ」という手法だ。つまりエーオン本社は、伝統的な発電事業から事実上「撤退」し、21世紀の新しいビジネスへ向けて新たな航海に出るわけだ。

 なぜエーオンは、これほど大胆なリストラに踏み切るのだろうか。その理由は、福島事故以降の原子力事業の業績悪化と、再生可能エネルギーによる電力の急増だ。太陽光発電装置の駆け込み設置が2010年以来急増したことなどにより、電力の卸売市場に大量のエコ電力が流入し、供給過剰状態が出現。電力の卸売価格が大幅に下がった。たとえば経済社会の恒常的な電力需要をカバーするベースロードと呼ばれる電力の先物取引価格は、2008年から2013年までに50%、需要が最も高くなる時のピークロードと呼ばれる電力の先物価格は、65%も下落した。

■新エネ普及で業績悪化

 この価格下落のため、褐炭、石炭、天然ガスによる火力発電所の収益性が悪化。特に減価償却が終わっていない天然ガス発電所では、運転コストすらカバーできないところが現れた。発電すればするほど、損失が膨らむのだ。2013年のエーオンのドイツ国内での発電比率の中では、石炭、褐炭、天然ガスなどの化石燃料が59.5%、原子力が29.2%である。再生可能エネルギーはわずか11.4%と全国平均に比べて大幅に低い。つまりエーオンの発電比率の9割近くが、採算性の悪化しつつある部門なのだ。

 エーオンの2014年1~9月の純利益は、前年の同じ時期に比べて25%も減った。第4・四半期には、発電所の資産価値の低下によって、45億ユーロ(6300億円)の特別損失を計上する見込みで、通年では再び赤字決算となる可能性がある。

 ヨハネス・タイセン社長は、2014年12月2日の記者会見で「現在の企業構造では、急激に変化する市場に対応できない。これまで通りのやり方を続けていくわけにはいかない」と断言した。同時に「再生可能エネルギーのうち、風力や太陽光はまだ初期段階にあるが、火力発電などの伝統的な発電事業に比べて、今後急速に伸びると確信している」と述べ、同社の未来は新エネルギーにあるという見方を明らかにした。SPDで環境問題に詳しいミヒャエル・ミュラー議員は、「エーオン分割は、エネルギー転換の勝利を意味する」と宣言した。

 日本でいえば東京電力に相当するトップ企業が、原子力・火力発電から事実上「撤退」し、風力や太陽光発電を基幹事業にするという決定は、「ドイツで再生可能エネルギー拡大が失敗した」という日本での一部の報道に対する反証である。ドイツ人たちは、「物づくりと貿易に依存する経済大国も、自然エネルギーを中心とした電力供給体制への転換が可能だ」というテーゼを世界中に対して立証しようとしているのだ。

■エネ消費と経済成長のデカップリング

 さらにドイツは、エネルギーの消費量を増やさずに経済成長を達成することをめざしている。同国のエネルギー消費量とGDPの間の相関関係は、年々弱まりつつある。

 電力会社などが作っているエネルギー収支作業グループ(AGEB)が2014年9月に発表した報告書によると、1990年から2013年までにドイツの国内総生産(実質GDP)は、37.8%増えた。しかし2013年のドイツの一次エネルギー(石炭、風力など他のエネルギーに変換されるエネルギー)の消費量は、1990年に比べて7.4%減った。GDP1000ユーロあたりの一次エネルギー消費量は、同期間に32.5%減ったほか、国民1人あたりの一次エネルギー消費量も、8.3%減った。エネルギー効率の改善はドイツ政府が最も重視する目標であり、今後もエネルギー消費と経済成長率の乖離(かいり)傾向が続くものと思われる。

 ドイツのエネルギー転換については、今後も経済性や安定供給をめぐって激しい議論が行われ、様々な曲折があることは間違いない。しかしこの国がめざす「原子力と化石燃料への依存から脱する」という究極の目標には、ぶれがないように思われる。
ーーー朝日新聞(27.6.26)




高レベル廃棄物出ない核融合、実験炉土台が完成(27.5.19)

 【カダラッシュ(フランス南部)=本間圭一】核融合エネルギーの実現を目指して日米欧などが共同で建設を進める、国際熱核融合実験炉(ITER)の土台部分が完成し、報道陣に18日、公開された。
フランス南部カダラッシュにある国際熱核融合実験炉(ITER)の建設現場(18日、本間圭一撮影)
フランス南部カダラッシュにある国際熱核融合実験炉(ITER)の建設現場(18日、本間圭一撮影)

 ただ、ITER機構のベルナール・ビゴ機構長は、2020年頃に実験炉を完成させるとした目標の実現が難しいとの見通しを示した。

 ITERは、水素の一種である「重水素」と「三重水素」が、核融合を起こしてヘリウムになる反応を利用し、エネルギーを取り出す。ウランの核分裂を利用する原子力発電と異なり、地下深くに数万年、隔離する必要がある高レベル放射性廃棄物は出ない。建設現場責任者のロラン・パティソン氏は「来年以降、実験炉の部品が搬入され、組み立てが始まる」と話した。
ーーー読売新聞(27.5.19)





原発安全費2.3兆円増 13年新基準後、揺らぐ経済性(27.5.17)

福島第一原発事故後に施行された原発の新しい規制基準で必要になった追加の安全対策費が大手電力九社で少なくとも総額二兆三千七百億円を上回る見通しであることが本紙の調べで分かった。経済産業省が二〇一三年秋に公表した調査結果は約一兆六千五百億円で、一年半の間に四割、金額にして七千億円増加していた。各社によると、まだ試算すらできていない原発もあり、費用はさらに膨らみそうだ。
 

 安全対策費の一部は既に原発維持に必要な経費として電気料金に上乗せされ、企業や家庭が負担。対策費の増加は原発の発電コストを押し上げる要因になり、経済性を理由に再稼働を目指す政府や電力業界の主張が揺らぐことにもなる。

 本紙はことし四月、原発を保有していない沖縄電力を除く九社を対象にアンケートを実施。東京電力福島第一原発事故後、追加の安全対策として行っている工事や計画している工事などについて尋ねた。

 それによると、関西電力を除く、八社が経産省の調査時点から軒並み増額。関電は「最新の数値は公表できない」として経産省の調査以前の一二年十一月時点の金額を回答した。

 このうち北海道電力は、九百億円から二千億円台前半と二倍以上に膨らんだ。同社は泊原発1~3号機(北海道泊村)の再稼働に向け原子力規制委員会で審査中だが、規制委から火災の防護対策が不十分との指摘を受け「必要な工事が大幅に追加となった」(広報部)としている。

 同じく島根原発2号機(松江市)が審査中の中国電力も二千億円超と、ほぼ倍。浜岡原発(静岡県御前崎市)敷地内に海抜二十二メートルの防潮堤などを建設している中部電力は三千億円台後半で、当初から五百億円以上の上積みになる見通し。

 アンケートでは九社のうち北海道電、中部電、関電、中国電、四国電力の五社が「審査の進展に伴い工事内容の見直しや追加を行う可能性もある」(中部電)などと回答、今後さらに増額する可能性があると答えた。関電は運転開始四十年前後の老朽化した高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の再稼働も目指している。

 電力九社以外では、敦賀原発(福井県敦賀市)など三基を保有する日本原子力発電は九百三十億円超と回答。建設中の大間原発(青森県大間町)を持つ電源開発(Jパワー)は千三百億円を安全対策費として投じるという。

<原発の新規制基準> 福島第一原発の事故を受けて2013年7月8日に施行。津波対策としての防潮堤建設や全電源喪失事故に備えた非常用発電設備の設置、重大事故の影響を緩和するフィルター付きベントなども義務づけた。一方、航空機衝突などのテロ対策拠点となるバックアップ施設は5年間猶予。地元自治体の避難計画については定めていない。電力各社が15原発の24基の適合審査を原子力規制委員会に申請している。
ーーー東京新聞(27.5.17)




原発2割の電源構成、再生エネほぼ同率 公約違反の声も(27.4.29)

経済産業省は28日の有識者会議で、2030年の電源構成(エネルギーミックス)案を示した。全発電量のうち、原発は2割以上を確保し、再生可能エネルギーはほぼ同じ割合にとどまる。政府は原発依存度をできるだけ減らし、再生エネを最大限入れるとしてきただけに、委員からは「公約違反だ」などと批判も上がった。
写真・図版
経済産業省の2030年度の電源構成案(数字は%)

 経産省が「長期エネルギー需給見通し小委員会」(委員長・坂根正弘コマツ相談役)で示した電源構成案によると、原発の割合は20~22%。東日本大震災前の10年間の平均(約27%)よりは低くした。発電コストが安く、温室効果ガスの削減にもつながるので、少なくとも2割は必要というのが経産省の考え方だ。

 再生エネの割合は、原発と同じかやや上回る22~24%。太陽光は7・0%、風力は1・7%に抑えられた。太陽光は、大手電力が現状で受け入れられる量を積み上げた数字とほぼ変わらない。風力も、いま環境影響評価中のものが導入された程度にとどまる。

 再生エネの普及を後押しする固定価格買い取り制度(FIT)は、電気料金に上乗せされた「賦課金」で支えられている。このため、再生エネが増えると、負担も増えるため、経済界などが拡大に慎重だった。

 そこで、経産省は今回の案をつくるにあたり、そうした負担増を抑えて経済成長につなげるため、運転にかかる費用(電力コスト)を13年の9・7兆円から30年に9・5兆円に下げる必要があると決めた。同省の試算では、原発の発電コストが1キロワット時あたり10・1円以上なのに対し、事業用太陽光は12・7~15・5円、陸上風力は13・9~21・9円とされた。これで、太陽光などの割合を低く抑え、コストが「最安」と見積もった原発の積極活用を打ち出した。

 こうした考え方に、委員会では橘川武郎・東京理科大大学院教授が「この数字が本当に公約を果たしたといえるのか」と指摘。高村ゆかり・名古屋大大学院教授も「太陽光や風力は積み増す余地がある」とした。一方で「バランスの取れた案」などと賛同する意見も多く、経産省案が、そのまま政府案になる見通しだ。
---朝日新聞(27.4.29)




【原発の発電コスト】原発の電力、風力より高い 太陽光とも同レベル 米企業系調査機関が試算(26.9.17)


原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。


発電コストの比較

 東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。2004年の日本政府による試算では、原発発電コストは1キロワット時当たり5・9円だった。

 BNEFは、原子力やバイオマス、地熱、水力など23の発電手法について、14年上期時点の世界各国の設備費、燃料費、資金調達に必要な債務費などを調べ、施設の耐用年数などでならしたコストを算出した。

 炉心溶融などの深刻な事故を防ぐための対策強化が求められるようになった結果、原発の発電コストは近年上昇しており、設備利用率を92%と高く見積もっても1キロワット時当たり14セントとなった。

 地熱(同6・5セント)、小水力発電(同7・7セント)、陸上風力(同8・2セント)などの再生可能エネルギーに比べてかなり割高だった。石炭火力は9・1セント、天然ガス火力は8・2セントだった。

 原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含んでいない。

 太陽光発電は近年、発電コストが下がって14・9セントとなっている。日本では、海外に比べ高価な国内製機器が使われることから32・9セントと高いが、BNEFは「安価な輸入品機器の利用拡大で、コストは低下傾向にある」としている。風力発電も日本は機器コストが高く、稼働率が欧米に比べて低いため、19セントと割高だった。

 BNEFは、米国大手情報サービス企業「ブルームバーグ」の傘下。

原発の発電コスト  日本の原発の発電コストは2004年の政府の審議会の試算で1キロワット時当たり5・3円とされ、他の電源に比べて有利だとされてきた。だが、東京電力福島第1原発事故後に政府の「コスト等検証委員会」で見直しが行われ、事故対策費などを含めると最低でも同8・9円と試算された。今回のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析は、同委員会の試算手法とは異なり、事故対策費用などは含んでいない。

ーーー共同通信(26.9.17)




発電コスト:原発「最も安価な電源」 経産省の試算(27.4.27)

◇2030年 過酷事故発生確率低下予想に疑問視する声も

 経済産業省は27日、2030年の原発や火力発電など電源ごとの発電コストの試算を有識者委員会に示した。原発の発電コストは、東京電力福島第1原発事故後の安全対策費の増加を反映し1キロワット時あたり「10.1円以上」と算定、11年の前回政府試算の「8.9円以上」から約1割上昇した。ただ、石炭や天然ガス火力も燃料調達価格の値上がりを見込んだ結果、前回試算よりコストが上昇。「原発の発電コストはほかの電源を下回る」として、経産省は原発を「もっとも安価な電源」と結論づけた。ただ、前提となる事故の確率を疑問視する声もあり、議論を呼びそうだ。

 試算結果は30年の電源ごとの総発電量に占める割合を示す電源構成(エネルギーミックス)策定の参考にする。発電コストは、建設費や燃料費など発電に必要なコストと運転期間中の総発電量から算出した。

 福島原発事故の廃炉や賠償の費用増加を反映し、原発では事故対応費を5.8兆円から9.1兆円に増額。一方、安全対策の強化で、原発の過酷事故発生の確率は、前回試算の「50基のうち1基が40年に1回」から「80年に1回」相当に低下すると想定、1基当たりの毎年の費用負担は減少する形になった。また、原発の安全対策費用は、原子力規制委員会の新規制基準への対応状況を踏まえ、前回試算の1基194億円から601億円に増額。その結果、原発の発電コストは1.2円上昇した。ただし、福島原発事故の対応費用が今後1兆円増加するごとに、発電コストは0.04円上昇するため、「10.1円以上」として上限は算定しなかった。有識者委からは「原発事故リスクは民間企業が負えるものではない。今回の試算では原発のコストが小さくみえる懸念がある」との批判も出た。

 一方、火力発電は、燃料相場の上昇や円安を想定した結果、石炭火力は10.3円から12.9円、天然ガス火力は10.9円から13.4円に上昇した。太陽光や風力など再生可能エネルギーは、12年に導入された固定価格買い取り制度の買い取り価格を反映した結果、最も安価なケースでも、住宅用太陽光が前回の9.9円から12.5円、陸上風力は8.8円から13.9円に上昇した。【中井正裕】
ーーー毎日新聞(27.4.27)




独メルケル首相:「脱原発の理由、福島事故を目にして…」(27.3.10)


 ◇講演で「原発には予想できないリスク生じることを認識」も

 来日中のドイツのメルケル首相は9日、東京都内で講演し、ドイツが2011年3月の東日本大震災直後に、エネルギー政策を転換して脱原発を決定した理由について「極めて高度な科学技術を持つ国で福島のような事故が起きたのを目の当たりにし、(原発には)予想できないリスクが生じることを認識した」と述べた。

講演するドイツのメルケル首相=東京・築地の浜離宮朝日ホールで2015年3月9日、代表

 福島第1原発事故を受け、メルケル政権は22年までに原発を段階的に停止し、再生可能エネルギーを拡充する政策へと転換した。メルケル氏は「(脱原発は)長年原子力の平和利用を支持してきた人間による、政治的な判断だった」と述べ、自らが物理学者として抱いていた原発の安全性に対する考えが揺らいだことを明かした。

 また、親ロシア派武装勢力により不安定化が進むウクライナ東部の情勢について「ロシアはウクライナの領土の不可侵性を侵害してきた」と非難。日本政府が欧米と同調して対露制裁を科していることに感謝し、自身が仲介したミンスク和平合意の実現を訴えた。

 北朝鮮の核開発問題を巡る6カ国協議についてメルケル氏は「成功のチャンスを秘めている」と評価し、今後の進展は北朝鮮の出方次第との見方を示した。現在、イランの核開発を巡り同国と、ドイツと米英仏中露の6カ国が、6月末の包括合意を目指して継続している核協議について「もし何らかの成果が出れば、北朝鮮の問題に影響を及ぼすかもしれない」と述べ、二つの交渉の前進に期待を示した。【中西啓介】
ーーー毎日新聞(27.3.10)





原発廃炉:米国で相次ぐ 安いシェールの火力拡大(27.2.14)

ワシントン清水憲司】世界で最も多く原発を保有する米国で、原発の廃炉が続いている。電力自由化に伴う価格競争が激しくなる中、シェール革命で火力発電のコストが安くなり、原発の優位性が低下。風力発電にも押されているためだ。電力規制が残って比較的安定した料金収入を得られる地域では新設の動きもあるが、米国の電力需要の約2割をまかなう原発の存在感は低下するとの見方が根強い。

 昨年末、北東部バーモント州のバーモント・ヤンキー原発が運転を終了した。米国では、2013年春、約15年ぶりにキウォーニー原発(ウィスコンシン州)が廃炉になって以来、4発電所5基が運転を終了、100基超あった米国内の原発は99基に減った。19年にもさらに1基が停止する。

 ヤンキー原発は1972年に運転を開始。老朽化を懸念する環境団体が廃炉運動を展開したが、米原子力規制委員会(NRC)は32年までの運転を認めていた。

 廃炉に追い込まれたのは、原発が利益を出しにくくなったからだ。同原発を運営してきた米電力大手エンタジーのビル・モール社長は「経済的要因が第一の理由だ」と説明する。シェール革命によるガス火力のコストが低下し、電力価格が下がる一方、原発は安全対策などのコストが増えた。

 米国では、電力市場の仕組みが地域ごとに異なる。電力販売が自由化された北東部や中西部では価格競争が激化。安価なシェールガスを使えるガス火力の発電比率が08年の約2割から12年には約3割に拡大、州政府などから補助金や税制優遇を受けた風力発電など再生可能エネルギーも普及し、原発は押され気味になった。

 従来、需要が少ない夜間の電力は、昼夜を問わず一定出力で運転する原発を中心にまかなっていたが、風力発電が増えて夜間電力が余るようになった。事業者間で売買される電力価格が「0ドル」になるケースもあり、原発の利益を押し下げた。原発は建設費が巨額でも、発電コストが安く、火力発電などに比べ優位とされてきたが、電力価格が大幅に値下がりすると、投資回収のリスクが高まる。

電力自由化地域で原発の廃炉が相次ぐ

 米シンクタンク資本形成協議会(ACCF)のデビッド・バンクス氏は「原子炉が1基しかないような小規模発電所ほど競争力が低下する。現行制度では、少なくともあと6基が閉鎖の危機にさらされる」と指摘。30年までに原発の発電規模は2割減る可能性があると分析する。
一方、オバマ政権は地球温暖化対策の強化に向け、再生可能エネルギーとともに原発を推進する方針を掲げ、建設中の原発も3カ所ある。いずれも電力販売の規制が残り、安定した収益を期待できる地域だ。ただ、今後も新増設が続くかは「補助金など政府がどの程度の推進策を新たに出すか次第」(日系原子炉メーカー幹部)。原発の“うまみ”が減る中、新増設の方は事業者の期待ほど進まないとの見方が根強い。
---毎日新聞(27.2.14)





新型原子炉開発、研究再開へ 原子力機構、疑問の声も(26.11.28)

日本原子力研究開発機構が高温ガス炉と呼ばれる新しい原子炉の研究再開を目指している。東日本大震災後、試験研究炉の運転を停止しているが、発電に使われる軽水炉より安全な「次世代の原子炉」として実用化を目指す。原発事故を受けて、新たな原子炉開発を進めることに疑問の声もあがる。
写真・図版
高温ガス炉のしくみ

 原子力機構は26日、茨城県大洗町にある試験研究炉について新規制基準に基づく審査を原子力規制委員会に申請した。開発理由とする「安全性」は、核燃料を耐熱性の高いセラミックで覆い、さらに2500度の温度にも耐える黒鉛製の容器に格納する構造だからだ。「炉心溶融を起こさない原子炉」と説明する。

 今後、性能を高める試験や安全性を確認する計画。950度という高温の熱を生かして、発電前の熱で水を分解し、水素を製造する技術も確立させる。
ーーー朝日新聞(26.11.28)





「高温ガス炉」運転再開へ原子力機構が審査申請(26.11.26)

日本原子力研究開発機構は26日、次世代型原子炉として期待される「高温ガス炉」の試験研究炉(茨城県)の運転再開に向け、原子力規制委員会に安全審査を申請した。

 この研究炉は現在、東日本大震災を受け停止中で、新規制基準に対応するため、施設を改良する工事の準備を進めている。再稼働は来年10月以降になる見通しだ。

 高温ガス炉は、普通の原子炉と違い、冷却に水ではなく化学的に安定したヘリウムガスを使う。また核燃料が耐熱性に優れたセラミックスで覆われているため、炉心溶融などの重大事故が起きるリスクが低いとされる。

 炉心の温度が、普通の原子炉の3倍以上にあたる950度になるのが特徴で、発電以外に、この熱を使って、燃料電池に使われる水素も製造できる利点がある。

 研究炉は、2030年ごろに実用化を目指す商用炉の約5%(熱出力で3万キロ・ワット)の規模。1998年に核分裂を連続して発生させる「臨界」に成功しており、研究の再開後は、出力を上げても安全性に問題はないことを確認する試験を繰り返す。
ーーー読売新聞(26.11.26)






【川内原発再稼働】〝宿題〟残したまま合格 難題は基準と燃料搬出(26.11.10)


九州電力川内原発(鹿児島県)の周辺には巨大噴火を起こした火山(カルデラ)が集中する。現在の科学では噴火の正確な予測は至難で、原発への影響も不確かな部分が多い。原子力規制委員会の審査には合格したが、〝宿題〟が残り、火山監視という「条件付き」合格だ。


川内原発の周辺カルデラ

 今後の難題は、巨大噴火の危険を判断する基準と、いざというときの核燃料搬出方法や搬出先の決定だ。再稼働への道程とは別に、検討が続くことになる。

 「火山学会挙げて夜も寝ないで観測をして、国民のために頑張ってもらわないと困るんだよ」

 5日の定例会見で規制委の田中俊一委員長は語気を荒らげ、日本火山学会の提言に対する見解を尋ねた記者をにらみつけた。「テレビのニュースを見て相当怒っていたらしい」と事務局の原子力規制庁職員は漏らす。

 同学会の原子力問題対応委員会は2日、噴火予測の限界を踏まえ、規制委の審査基準「火山影響評価ガイド」の見直しを求める提言をまとめた。

 だが、規制委との〝全面対決〟は避けたいもようだ。委員長の石原和弘京大名誉教授は規制委の検討会メンバーでもあり「現実に原発がある。基準を急に変えられないだろうから(見直しは)適当なタイミングで…」と苦しい胸中を明かした。

 九電は、巨大噴火が起きる危険性は十分小さいとの立場だが、火山学者と協力してカルデラを監視。前兆が疑われれば社内で協議した上で、社長が原子炉停止や燃料搬出を指示するという。

 しかし、桜島の監視を担う井口正人京大教授は「モニタリングは必要だが、今のままでは(予測は)無理」と断言する。

 学会内には電力会社との癒着を警戒する声もあり、小山真人静岡大教授は学会の大会で「電力から研究費をもらってカルデラの研究をしても、社会に中立とは認められない。そういう気概が私たちにあるのか」と疑問を投げかけた。

 九電は燃料の搬出方法については決定を先送りする構えだ。社内規定では「運び出す順番」「貯蔵や輸送の方法」「搬出先」を事前検討する―としているが、担当者は「(異常が出る)その段階まで決められない」と説明してはばからない。

 九電は姶良カルデラを対象に、地下深部からのマグマ供給量が10倍以上に増えても巨大噴火まで60年前後あると試算しており、時間的な余裕は十分あるとみていることが背景にありそうだ。

 ただ九電が将来、燃料搬出と判断した場合、「さまざまな方面への影響が非常に大きい」(規制庁職員)と懸念する声は強い。地元住民や経済への影響は計り知れないが、搬出をためらえば未曽有の事態にもつながりかねず、難しい決断を迫られる。

ーーー共同通信(26.11.10)






どの発電方法が一番安い?民間試算で最安は…(26.10.26)

 エネルギー問題を研究する民間研究機関「地球環境産業技術研究機構」(理事長=かや陽一・東大名誉教授)は原子力発電や再生可能エネルギーなどについて、それぞれどれくらいの発電コストがかかるかの試算をまとめた。

 1キロ・ワット時あたりで石炭火力発電が7・8円で最も安く、原子力発電が8・0円と続いた。

 原発は、事故が起きた場合の賠償などにかかる費用を上乗せしても8・4円にとどまった。

 一方、再生可能エネルギーは、メガソーラー(大規模太陽光発電所)が30・6円、風力が21・2円と割高だった。メガソーラーは、2013年度は36円(税抜き)で買い取られており、このうち、業者が受け取る利益は約6円となる計算だ。機構は「一部の再生可能エネルギー業者に過大な利潤がもたらされ、利用者が負担を負う形になっている」と指摘している。
ーーー読売新聞(26.10.26)






原発比率は3割未満に…経産相、具体的水準示す(26.10.24)


宮沢経済産業相は23日、読売新聞などのインタビューに応じ、将来の国内の全発電量に占める原子力発電の割合について「(東日本大震災前の水準の)3割を目指すことには絶対にならない」と述べ、3割を下回る水準にする考えを示した。

 政府は「原発への依存度を可能な限り低減させる」としているが、閣僚が具体的な水準を示したのは初めて。

 宮沢氏の発言は、震災前の水準近くまで原発を再稼働させることを容認する意向を示したともいえる。

 政府は来年中に原子力や火力などそれぞれの電源でどのくらいの電力を賄うのかを示す「最適な電源構成」(ベストミックス)を決める予定だ。これに3割未満となる数値目標を盛り込む意向とみられる。

 震災前の原発比率は28・6%だった。現在は原発が稼働していないためゼロ%。

 宮沢氏は、3割未満にする理由について「今後、廃炉になる原子炉も出てくる」と説明した。今後、一定の原発の再稼働が進む一方で、稼働から40年超の老朽原発の多くが廃炉となり、さらに原発の新増設は難しいと見ているためだ。
---読売新聞(26.10.24)







新型原子炉 見えぬ実用化 政府、再開申請へ(26.9.19)

政府が十八日、東京電力福島第一原発事故を受けて運転を中止していた新型原子炉の一つである高温ガス炉「高温工学試験研究炉」(HTTR、茨城県大洗町)の再開に向けて動きだした。原子力への国民の不安が払拭(ふっしょく)されないまま実用化のめどが立たない研究に多額の税金を費やすのは一兆円以上をつぎ込んで頓挫している高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の二の舞いになりかねない。

 世耕弘成官房副長官は十八日の記者会見で、HTTRの運営主体の日本原子力研究開発機構(原子力機構)が十一月、原子力規制委員会に新規制基準に基づく運転再開のための審査を申請する見通しを表明。「安全性、経済性に優れているとされ、早期の運転再開が必要だと認識している」と述べた。文部科学省はHTTRの運転再開のため、二〇一五年度政府予算で十六億円を概算要求している。

 従来の原発(軽水炉)が核燃料の冷却に水を使うのに対し、高温ガス炉は気体のヘリウムなどを用いる。

 安倍政権は四月に閣議決定したエネルギー基本計画に、高温ガス炉の研究開発推進をもぐり込ませた。原子力機構はもんじゅの運営主体であり、自民党の河野太郎衆院議員は「もんじゅがだめだから高温ガス炉を突然入れてきた。予算確保が見え見えだ」と批判していた。

 九州大の吉岡斉(ひとし)教授(原子力政策)は「今やる理由が分からない。原子力機構は他に動かせそうなものがないから、研究機関としての稼働度を上げるために高温ガス炉に目を付けたのでは」と指摘した。

 政府は三〇年に高温ガス炉の実用化を目指しているが、成功しても「核のごみ」は発生する。最終処分場が見つかる見通しはなく、行き場のない核のごみは増え続ける。安倍政権は一二年の衆院選公約に脱原発依存を掲げ、原発依存度を下げると繰り返し表明しているが、逆行する動きとなる。 (宮尾幹成)

 <高温ガス炉> 原子炉内に水を循環させて沸騰させる「軽水炉」に対し、ヘリウムなどの気体を加熱してタービンを回す。事故を起こしても核分裂反応が自動的に止まり、核燃料を空気で自然に冷却できるなど、軽水炉より安全性が高いとされる。一方、扱う温度が高く原子炉内の材料の耐久性など技術的に難しい点も多い。高温工学試験研究炉は1991年に着工し98年に核分裂が持続する「臨界」を達成。2011年の福島原発事故後は運転を停止した。
ーーー東京新聞(26.9.19)







【原発の発電コスト】原発の電力、風力より高い 太陽光とも同レベル 米企業系調査機関が試算(26.9.17)

原発の発電コストは世界的には1キロワット時当たり平均14セント(約15円)で太陽光発電とほぼ同レベル、陸上風力発電や高効率天然ガス発電の8・2セントに比べてかなり高いとの試算を、エネルギー問題の調査機関として実績のある米国企業系「ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンス」(BNEF)が16日までにまとめた。


原発コストの比較

 東京電力福島第1原発事故後の安全規制強化もあって建設費や維持管理にかかる人件費などが世界的に高騰していることが主な理由。再生可能エネルギーのコストの低下が続く中、原子力の優位性が薄れていることを印象付ける結果となった。2004年の日本政府による試算では、原発発電コストは1キロワット時当たり5・3円だった。

 BNEFは、原子力やバイオマス、地熱、水力など23の発電手法について、14年上期時点の世界各国の設備費、燃料費、資金調達に必要な債務費などを調べ、施設の耐用年数などでならしたコストを算出した。

 炉心溶融などの深刻な事故を防ぐための対策強化が求められるようになった結果、原発の発電コストは近年上昇しており、設備利用率を92%と高く見積もっても1キロワット時当たり14セントとなった。

 地熱(同6・5セント)、小水力発電(同7・7セント)、陸上風力(同8・2セント)などの再生可能エネルギーに比べてかなり割高だった。石炭火力は9・1セント、天然ガス火力は8・2セントだった。

 原発コストには、放射性廃棄物処分のために電力会社が積み立てている費用を含むが、廃炉費用は含んでいない。

 太陽光発電は近年、発電コストが下がって14・9セントとなっている。日本では、海外に比べ高価な国内製機器が使われることから32・9セントと高いが、BNEFは「安価な輸入品機器の利用拡大で、コストは低下傾向にある」としている。風力発電も日本は機器コストが高く、稼働率が欧米に比べて低いため、19セントと割高だった。

 BNEFは、米国大手情報サービス企業「ブルームバーグ」の傘下。

原発の発電コスト  日本の原発の発電コストは2004年の政府の審議会の試算で1キロワット時当たり5・3円とされ、他の電源に比べて有利だとされてきた。だが、東京電力福島第1原発事故後に政府の「コスト等検証委員会」で見直しが行われ、事故対策費などを含めると最低でも同8・9円と試算された。今回のブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスの分析は、同委員会の試算手法とは異なり、事故対策費用などは含んでいない。
---共同通信(26.9.17)







注目高まる安全な原発 日本がトップ独走、次世代型「高温ガス炉」 国が開発推進(26.8.25)


2030年の実用化目指す

 東京電力福島第1原発事故の教訓を受け、過酷事故のリスクが低い次世代の原子炉「高温ガス炉」が脚光を浴びている。放射性物質の放出や炉心溶融などが起きないとされ、2030年の実用化を目指して実験が進んでおり、国は研究開発を積極的に推進していく方針だ。(伊藤壽一郎)


次世代原子炉

自然に停止

 ヘリウムガスを冷却材に使う高温ガス炉は、基本的な仕組みは既存の原発と同じだ。ウラン燃料の核分裂反応で生じた熱でタービンを動かし、電力を生み出す。だが過酷事故の発生リスクは極めて低いという。

 茨城県大洗町にある日本原子力研究開発機構の高温ガス炉の試験研究炉「HTTR」。ここで4年前、運転中に炉心冷却装置を停止する実験が行われた。福島第1原発事故と同じ状況だ。原子炉は、いったいどうなったか。

 「何も起こらず自然に停止した。何もしなくても安全だった」。同機構原子力水素・熱利用研究センターの国富一彦センター長はこう話す。

 炉心冷却を停止すると、通常の原発は温度上昇で危険な状態に陥る。しかし、HTTRは停止とほぼ同時に原子炉の出力がゼロになり、温度は一瞬上昇しただけで安定していた。放射能漏れや炉心溶融は、もちろん起きなかった。

炉心溶融せず

 高温ガス炉の安全性が高いのは、燃料の保護方法、炉心の構造材や冷却方式が従来と全く異なるためだ。

 既存の原発では、運転時の炉心温度は約300度。燃料の被覆材や、燃料を収める炉心構造材は耐熱温度が千数百度の金属製で、冷却材には水を使う。福島第1原発事故は冷却手段が失われ、炉心は2千度前後の高温になり溶融して燃料が露出。溶けた金属と冷却水の水蒸気が反応して水素爆発を起こし、放射性物質の飛散に至った。

 これに対しHTTRの炉心温度は950度と高いが、球状(直径0・9ミリ)の燃料は耐熱温度1600度のセラミックスで覆われており、これを2500度の超高温に耐える黒鉛製の炉心構造材に収めている。冷却材のヘリウムガスは化学的に安定で燃焼しない。これが炉心の高い熱エネルギーを運ぶため、高温ガス炉と呼ばれる。

 冷却手段が失われても炉心は理論上、1600度を超えないため、燃料の被覆が熱で壊れて放射能が漏れることはない。黒鉛製の構造材も溶融しない上、放熱効果が高いため自然に熱が逃げて冷える。

 水を使わないため水素爆発や水蒸気爆発の懸念もない。核分裂反応も、冷却停止で炉心温度がわずかに上がると、ウランは分裂しない形で中性子を吸収するため自然に停止するそうだ。

高温ガス炉を循環するヘリウムガスの熱は、水素製造など幅広い用途が期待されている。水を熱分解して水素を作るには通常、約4千度の熱が必要だが、同機構はヨウ素と硫黄を利用し約900度で製造する方法を開発しており、燃料電池用などの水素需要に応えられるという。

 高温ガス炉は既存の原発と比べて発電コストが3分の2、使用済み燃料の量は4分の1で、水を使わないため海岸ではなく内陸にも建設できるなど利点は多い。

 ただ、規模を大きくすると冷却効率が下がるため、発電出力は大型原発の4分の1の30万キロワットにとどまるという課題もある。このためHTTRは1991年に着工、98年に初臨界を達成しながら、長く注目が集まらなかった。

 ところが東日本大震災で「規模より安全」が重視されると一躍、存在感が高まった。政府は4月に策定したエネルギー基本計画で、次世代原子炉として研究開発の推進を明記。文部科学省の作業部会が9月に開発計画を発表する見通しだ。

 世界で稼働している高温ガス炉は現在、HTTRと中国の700度の試験炉だけ。950度での運転を実現した日本は研究のトップを独走している。

 だが中国と米国は試験炉の次の段階である実証炉の建設計画が進行中で、韓国でも950度の実証炉の検討が始まっており、追い上げが激しくなってきた。

 国富氏は「安全技術は既に確立している。海外勢に追い越されないように日本も早く実証炉を作り、2030年ごろの実用化を目指したい」と話している。
---産経新聞(26.8.25)








高温ガス炉の優れた安全特性を実証(2007年)

図7-19 高温ガス炉の優れた安全性


高温ガス炉はセラミックと炭素で4重に被覆した燃料を用い、冷却材には高温においても化学変化がないヘリウムガスを採用し、熱容量の大きい黒鉛で炉心を構成することから、燃料の破損や炉心溶融に至る事故が起きる可能性は極めて低い原子炉ですが、冷却材流量が低下した場合の安全性の実証が残された課題の一つです。


図7-20 原子炉出力100%(30MW)での試験結果


この試験により、冷却材流量が1/3まで低下するような事象が生じても、原子炉は穏やかに安定な状態に落ち着くという優れた安全性が実証されました。

将来のエネルギー源の多様化とエネルギー安定供給、更には地球環境保全の観点から、高温の熱を発電のみならず水素製造,海水淡水化など様々な用途に利用する高温ガス炉技術の開発を、世界のトップランナーとして進めています。高温ガス炉は、セラミックと炭素で4重に被覆した耐久温度の極めて高い燃料を用いるため、核分裂生成物を高温まで有効に閉じ込めることができ、また、炉心を構成する構造物を黒鉛で製作することから、熱容量が大きく、急激な炉心の温度上昇が起こらず、更に、冷却材に用いるヘリウムガスは、温度が上昇しても相変化がなく、構造材と反応して腐食させたりしません。このため、高温ガス炉は、設計用基準地震動を上回る地震に対しても、燃料の大規模破損や炉心溶融に至る事故の起きる可能性が極めて低いという優れた安全性を持っています(図7-19)。950℃以上の高温の熱を発生させる次世代の原子炉システムの一つである高温ガス炉システムの開発では、この優れた安全性を実際の原子炉で実証することが世界的な課題でした。

世界で唯一950℃までの高温の熱を取り出せるHTTRは、次世代高温ガス炉に最も近い原子炉であり、世界の注目を集めながら安全性を実証する試験を行ってきました。安全性の実証の中でも冷却材の流量が低下する事象は、燃料や炉心の健全性維持に対して特に厳しい事象であるため、その試験成果が注目されていました。試験では、熱出力を30%(9MW)から段階的に上昇させながら冷却材流量が低下した場合の原子炉挙動を把握してきましたが、このたび100%の全出力(30MW)において冷却材流量を低下させる試験に世界で初めて成功しました。

試験では、3台のヘリウムガス循環機のうち、2台までを停止させて、冷却材流量を定格値の1/3まで低下させました。冷却材流量の低下により、炉心を冷却する能力が劣化するため、燃料及び黒鉛の温度が上昇します。このとき、原子炉が持つ固有の自己制御性により、核分裂反応が減少して原子炉出力は自然に低下して安定な状態に落ち着きます。これに伴い、原子炉の入口・出口の冷却材温度もわずかに変化しますが、ほぼ一定温度を維持しています。一方、安全解析用コードの改良も進めており、これまでのところ高温ガス炉の炉出力を8%以内という高い精度で予測できることを確認しました。この安全解析用コードによる燃料最高温度の評価では、冷却材流量の低下に伴って温度が急激に上昇することはなく、温度がわずかに上昇した後、流量低下前の温度に戻っています(図7-20)。このように、冷却材流量が低下しても原子炉は穏やかに安定な状態に落ち着くという、高温ガス炉の優れた安全性をHTTRを用いて実証しました。HTTRによる試験結果から、高温ガス炉では、冷却材流量が低下しても原子炉を自動的に緊急停止させる必要はないと考えています。今後、HTTRを用いて、更に厳しい事象である冷却材流量を完全に喪失させる試験を計画しています。本研究は、文部科学省からの受託研究「高温ガス炉固有の安全性の定量的実証」の成果です。
ーーー原子力基礎工学研究(2007年)







次世代原子炉 高温ガス炉  三菱重工


次世代原子炉 高温ガス炉 HTTR







川内原発、審査合格で安全は半数 30キロ圏の自治体アンケート(26.8.2)


 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)が再稼働を前提にした審査に事実上合格したことを受け、同県と原発の半径30キロ圏の9市町に共同通信が2日までにアンケートした結果、「原発の安全性が保証された」との回答はなく「どちらかと言うと保証された」も5市町にとどまった。また再稼働に4市町が「条件付きで賛成」と回答。他は「判断する立場にない」などとし、反対する自治体はなかった。

九州電力の川内原発(手前)=2013年6月、鹿児島県薩摩川内市

 地元経済を後押しするとして再稼働への期待感がある一方、安全対策への懸念が根強い実態が示された。防災面では、対策が追いつかない現状も浮き彫りになった。
ーーー東京新聞(26.8.2)







川内原発再稼働「反対」59% 朝日新聞社世論調査(26.7.28)

朝日新聞社が26、27日に実施した全国世論調査(電話)で、九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の運転再開について尋ねたところ、「賛成」は23%で、「反対」の59%が大きく上回った。

 安倍内閣の支持率は42%で、第2次安倍内閣発足以来、最低。不支持率は36%で、こちらも第2次内閣発足来、最高を更新した。

 安倍内閣の支持率は5月は49%だったが、集団的自衛権をめぐる議論が本格化した6月の調査時点でこれまでで最低の43%を記録。7月4、5日の緊急調査では44%だった。不支持率は特定秘密保護法成立後の昨年12月の34%がこれまでの最高で、今年6月、7月上旬の調査ではともに33%だった。

 川内原発については、原子力規制委員会が7月16日に新たな規制基準を満たすと認めており、九電が地元の同意などを得れば、10月にも再稼働が可能になるが、世論は「反対」が多数を占めた。

 調査では、現在停止している原発を再稼働しないと経済に悪い影響が出るかどうかも聞いたところ、「悪い影響が出る」は42%、「そうは思わない」は43%と、意見が割れた。しかし、原発について「技術と管理次第では安全なものにできる」と答えた人は25%にとどまり、「人の手に負えない危険性がある」と回答した人は63%にのぼった。首相の原発政策についても、福島第一原発事故の教訓が「生かされている」は19%で、「生かされていない」の61%が圧倒した。

 コンビニエンスストアやファストフード向けにチキンナゲットをつくっていた中国の食品会社が使用期限の切れた鶏肉を使っていた問題についても質問した。まず、コンビニやファストフードの食品の安全性を普段、気にしているかどうか聞いたところ、「気にしている」は、「大いに」22%と「ある程度」43%を合わせて計65%だった。「気にしていない」は、「あまり」26%と「まったく」6%を合わせて計32%だった。

 今回の事件を受けて、コンビニやファストフードで調理された食品を「買うのを控える」は64%。「それほどでもない」は23%だった。

 有効回答は1590人。回答率は45%だった。
ーーー朝日新聞(26.7.28)












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