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日本の平和と防衛を見直す時。

戦後69年を迎え、安倍内閣は積極的に平和と防衛対策の具体化を進めている。果たしてこの動きは、日本の平和と防衛を強化するものなのだろうか? 今緊急に必要なものだろうか? 戦後の日本の平和主義をどう維持するのだろうか? 事例を挙げて検討しているが、歴史は戦争は想定外に勃発し、硬直的に進展し、その結果誰も何も得ることはないことを示していることを忘れてはならない。



ニュース


新3要件で歯止め疑問 首相は抑止力拡大強調 衆院予算委集中審議(26.7.15)


安倍晋三首相と野党は14日の衆院予算委員会集中審議で集団的自衛権行使をめぐり論戦を交わした。首相は新たな「武力行使の3要件」が「厳格な歯止めとなる」と訴えたものの、民主党などは曖昧さを追及し疑問視。「内閣への白紙委任」になると懸念を突き付けた。行使容認で抑止力が拡大すると強調した首相に対し、野党から軍拡競争を招くとの指摘も出た。三つの論点を整理した。

 【歯止め効果】

 「3要件は世界で最も厳しい。きっちりとした歯止めだ」。首相は審議で、新3要件がいかに自衛隊の海外展開を限定するか力説した。
 連立を組む公明党を説得するかぎとなった新3要件は、他国への攻撃でも国民の権利が根底から覆される「明白な危険」がある場合、必要最小限度の実力行使を認める内容だ。


集団的自衛権をめぐる国会論戦のまとめ

 首相は恣意的な判断ができないことをアピールするため、審議で新たに「攻撃国の意思、能力、事態の発生場所、規模、態様、推移などの要素」「わが国に戦禍が及ぶ蓋然性」「国民が被ることとなる犠牲の深刻性、重大性」を「明白な危険」を判断する際の基準に挙げた。

 だが民主党の岡田克也元代表が具体的なケースでただすと3要件の曖昧さが露呈した。首相は中東地域のシーレーン(海上交通路)に機雷が敷設され世界経済が打撃を受けた場合や、他国による対米攻撃など日米同盟が深刻な影響を受ける場合も3要件に当てはまる可能性に言及。岡田氏は「3要件は一見厳しいが、経済的苦境や同盟関係(への影響)でも読めれば、何の限定もしていないに等しい」と舌鋒鋭く批判した。

 【抑止力】

 なぜ集団的自衛権行使が必要なのか―。首相はこの素朴な問いに対し、中国の海洋進出や北朝鮮の核ミサイル開発などを踏まえ「切れ目のない対応を可能とする国内法制を速やかに整備し、争いを未然に防ぐ力、抑止力を高めていくことが必要だ」と説明した。「地域の平和と安定を保つ」方策だとの理屈だ。

 これに対し民主党の海江田万里代表は緊張関係にある国同士が互いの警戒感から軍備増強の連鎖を起こす「安全保障のジレンマ」を引き合いに「抑止力万能主義になれば軍拡競争になる」と警告した。首相による靖国神社参拝に触れ、対中外交の努力を欠いたまま抑止力を強める危険性を前面に打ち出した。

 【地理的制約】

 「機雷掃海は受動的かつ限定的な行為だ。3要件を満たす場合には他国の領域内における武力行使であっても許容される」。岸田文雄外相は審議で他国領域での武力行使はあり得ると言明。地理的制約を明記しなかった閣議決定の内容より踏み込んだ。

 念頭にあるのはペルシャ湾・ホルムズ海峡で国連の集団安全保障措置に基づく機雷掃海への海上自衛隊の参加だ。「日本の石油の8割が通る」(首相)という同海峡の最も狭い部分は沿岸国の領海が重なる。

 岸田氏の答弁と「海外派兵はしない」と繰り返してきた首相発言との整合性について、行使容認に前向きな日本維新の会からも「機雷掃海は海外における武力行使ではないのか」(松野頼久国会議員団幹事長)と疑問の声が出た。

 機雷掃海を「受動的」と別扱いする「武力行使の使い分け」は国際的に通用せず、首相サイドも理論武装に苦心する。民主党の岡田元代表は「機雷除去から戦闘行為となる可能性は絶対にないとはいえない。国民にしっかり説明すべきだ」と格好の攻撃材料とした。

ーーー共同通信(26.7.15)







集団的自衛権容認「よくなかった」50% 朝日新聞調査(26.7.5)

安倍政権が集団的自衛権を使えるよう憲法解釈を変更したことを受け、朝日新聞社は4、5日に全国緊急世論調査(電話)を実施した。集団的自衛権を使えるようにしたことは「よかった」は30%で、「よくなかった」の50%が上回った。
写真・図版
集団的自衛権の容認の世論調査結果

写真・図版
安倍内閣の支持率推移

安倍内閣の支持率は44%で、不支持率は33%。6月の支持率は第2次内閣発足以来最低の43%で、不支持率は33%だった。

 集団的自衛権の行使容認については、内閣支持層、自民支持層の5割以上が「よかった」と答えたが、公明支持層では「よかった」は3割強で、「よくなかった」の方がやや多かった。
ーーー朝日新聞(26.7.5)








内閣支持47%に下落 集団的自衛権納得せず 82%が「検討不十分」 共同通信世論調(26.7.3)


集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更の閣議決定を受け、共同通信社が1、2両日実施した全国緊急電話世論調査によると、安倍内閣の支持率は47・8%で、前回6月から4・3ポイント下落した。不支持率は40・6%と第2次安倍政権としては初の40%台に上昇し、支持率との差は7・2ポイントにまで接近した。行使容認への反対は54・4%で半数を超え、賛成は34・6%だった。安倍晋三首相が踏み切った行使容認に 国民が納得していない 実態が浮かんだ。


世論調査の主な結果

 支持率50%割れは、特定秘密保護法成立直後の昨年12月調査以来。6月調査の不支持率は33・0%だった。首相が政府、与党に検討を指示してから約1カ月半で憲法解釈変更が閣議決定されたことに関しては、82・1%が「検討が十分に尽くされていない」と答えた。

 集団的自衛権をめぐり「行使容認の範囲が広がる恐れがある」との歯止め策への懸念は73・9%に上った。安倍政権による安全保障政策の転換に関し、衆院を解散して「国民に信を問う必要がある」との回答は68・4%だった。行使容認を憲法改正ではなく解釈変更で決定した内閣の対応は60・0%が「妥当だったとは思わない」とし、「妥当だったと思う」は31・7%にとどまった。

 行使容認によって抑止力が高まるとの首相の説明に対し、「抑止力が高まる」「どちらかといえば抑止力が高まる」との答えは計34・0%。逆に「戦争に巻き込まれる可能性が高まる」「どちらかといえば戦争に巻き込まれる可能性が高まる」との見方が計61・2%と、大幅に上回った。

 行使容認に慎重だった公明党が最終的に容認へ転じたことには、65・6%が「納得できない」と答え、武力を伴う集団安全保障への自衛隊の参加は73・2%が反対した。

 政党支持率は自民党が0・5ポイント増の37・5%で、民主党は2・2ポイント増の7・8%。共産党5・3%、日本維新の会3・9%、公明党3・3%、みんなの党1・6%、社民党1・5%、生活の党0・8%、結いの党0・4%、新党改革0・1%で、支持政党なしは36・9%だった。

ーーー共同通信(26.7.3)







政府、集団的自衛権行使へ閣議決定 憲法解釈を変更(26.7.2)

安倍内閣は1日夕の臨時閣議で、他国への攻撃に自衛隊が反撃する集団的自衛権の行使を認めるために、憲法解釈を変える閣議決定をした。歴代内閣は長年、憲法9条の解釈で集団的自衛権の行使を禁じてきた。安倍晋三首相は、その積み重ねを崩し、憲法の柱である平和主義を根本から覆す解釈改憲を行った。1日は自衛隊発足から60年。第2次世界大戦での多くの犠牲と反省の上に立ち、平和国家の歩みを続け、「専守防衛」に徹してきた日本が、直接攻撃されていなくても他国の戦争に加わることができる国に大きく転換した日となった。

 首相は1日の記者会見で「現行の憲法解釈の基本的考え方は何ら変わることはない」と述べた。一方で、歴代内閣が集団的自衛権の行使を禁じる根拠とした憲法9条との整合性については詳しく語らなかった。

 首相は当初、憲法改正手続きを定めた憲法96条を改正することで、憲法を変えるハードルを下げようとした。しかし、改正の機運は盛り上がらず、憲法解釈の見直しに方針転換した。

 今回の閣議決定は、海外での武力行使を禁じた憲法9条の趣旨の根幹を読み替える解釈改憲だ。政府は1954年の自衛隊発足以来、自国を守る個別的自衛権の武力行使に限って認めてきた。しかし、閣議決定された政府見解では、日本が武力を使う条件となる「新3要件」を満たせば、個別的、集団的自衛権と集団安全保障の3種類の武力行使が憲法上可能とした。

 首相は記者会見で「いままでの3要件とほとんど同じ。憲法の規範性をなんら変更するものではなく、新3要件は憲法上の明確な歯止めとなっている」と強調した。

 しかし、これまでの政府の3要件には「我が国に対する急迫不正の侵害があること」という条件があり、日本は個別的自衛権しか認められないとされてきた。新3要件は「他国に対する武力攻撃」を含んでおり、集団的自衛権を明確に認めた点で全く異なる。さらに首相が「歯止め」と言う新3要件は抽象的な文言で、ときの政権がいかようにも判断できる余地を残している。

 首相は「日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなっていく」とした。だが、集団的自衛権行使の本質は、他国の戦争に日本が加わることだ。(円満亮太)

■危うい「すべて首相の意向」

 「日本人の命を守るため、自衛隊が米国の船を守る」。1日に首相官邸で開かれた記者会見。そう語る安倍晋三首相は傍らに、自らの指示で作らせた母子らが乗った米艦のパネルを置いた。集団的自衛権の議論に入る直前の5月15日の記者会見と同じものだ。

 自らの信じる結論に突き進む。「安倍さんを見ていると、正直、強引だなと思うことはある」。閣僚からもこんな感想が出るほど、今の首相は止められない。

 昨年末の特定秘密保護法。なりふり構わぬ法案審議に批判が集まり、首相は「丁寧に説明すべきだった」と謝罪した。5月の会見でも「与党協議は期限ありきではない」と熟議を約束。そこから50日も経たないうちの閣議決定である。

 「これは総理の悲願だから」。首相官邸の高官や自民党幹部から連日こんな言葉を聞く。集団的自衛権がなぜ必要か。なぜいまか。すべてが「首相の意向」で退けられ、疑問を差し挟む余地はない。一昨年の衆院選と昨年の参院選でねじれ国会を終わらせた首相の力は、政府・与党内で強い。

 しかし、いずれの選挙でも、集団的自衛権は公約の中心にはなかった。参院選ではむしろ憲法改正を説き何より経済政策への支持で今日の政権安定を得た。

 そうして獲得した権力をまるで白紙委任されたように使い妥協しない。歴代内閣が禁じたことを「できるようにした」のに「憲法解釈の基本は変えていない」と言う。その矛盾に、首相は向き合おうともしない。(冨名腰隆)

     ◇

 〈武力行使の新3要件〉 ①我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合に、②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がない時に、③必要最小限度の実力を行使すること――という内容。

     ◇

〈閣議決定のポイント〉

▼密接な関係の他国に武力攻撃が発生し、日本の存立が脅かされ、国民の権利が根底から覆される明白な危険がある場合、集団的自衛権を含む「自衛のための措置」を可能に

▼自衛隊の国連平和維持活動(PKO)などで、自衛隊が武器を使える場面を拡大

▼自衛隊が他国軍に後方支援する場所を「非戦闘地域」に限る制約は撤廃

ーーー朝日新聞(26.7.2)


 海外新聞の日本の集団的自衛権の記事を見る。



集団自衛権、限定容認…新見解を閣議決定(26.7.2)

政府は1日夕、首相官邸で臨時閣議を開き、憲法解釈上できないとされてきた集団的自衛権の行使を、限定容認する新たな政府見解を決定した。

記者会見する安倍首相(1日午後6時19分、首相官邸で)=清水敏明撮影

 国連平和維持活動(PKO)などで自衛隊の活動分野を広げ、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態への対処能力も高める。安倍首相は記者会見で、日本が再び戦争をする国になることはないと断言するとともに、中国の台頭など緊迫する東アジア情勢を踏まえ、抑止力の向上につながると強調した。新政府見解で、戦後日本の安全保障政策は大きな転換点を迎えた。

 首相は閣議決定後の1日夕、首相官邸での記者会見の冒頭、「いかなる事態でも国民の命と平和な暮らしは守り抜いていく。私にはその大きな責任がある」と語った。新政府見解で憲法解釈を変更したことについて、「現実に起こりうる事態において何をなすべきかという議論だ。万全の備えをすることが日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく。これが抑止力だ」と述べ、中国の軍拡や北朝鮮の核・ミサイル開発などを踏まえ、戦争に巻き込まれないための抑止力強化に狙いがあることを強調した。
ーーー読売新聞(26.7.2)



海外記事ダイジェスト、WSJ 、ワシントンポスト紙の社説




集団的自衛権:81年見解を変更 戦後安保の大転換(26.7.2)

政府は1日、臨時閣議を開き、憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認すると決めた。集団的自衛権は自国が攻撃を受けていなくても、他国同士の戦争に参加し、一方の国を防衛する権利。政府は1981年の政府答弁書の「憲法上許されない」との見解を堅持してきたが、安全保障環境の変化を理由に容認に踏み切った。自国防衛以外の目的で武力行使が可能となり、戦後日本の安保政策は大きく転換する。

 閣議決定文の名称は「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」。安倍晋三首相は閣議後に首相官邸で記者会見し、「海外派兵は一般に許されないとの原則は全く変わらない。日本が戦争に巻き込まれる恐れは一層なくなる」と理解を求め、内閣官房に関連法案作成チームを設ける考えを示した。

 今回の閣議決定は、81年見解の基となった72年国会提出資料の「国民の権利を守るための必要最小限度の武力行使は許容される」との考え方について「基本的な論理」とし、「今後とも維持されなければならない」と位置付けている。

 そのうえで「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険」があれば日本が武力行使できると明記。「国際法上は集団的自衛権が根拠となる場合がある」との表現で、集団的自衛権の行使容認に加え、集団安全保障も否定していない。

 併せて、従来の「自衛権発動の3要件」に代わる武力行使の新3要件を策定。日本か他国かにかかわらず「我が国の存立が脅かされ、国民の権利が覆される明白な危険」があれば武力行使できるとした。公明党の山口那津男代表は記者会見で「憲法の規範性を維持する役割を果たせた」と強調。ただ、自衛隊の活動範囲や、何が「明白な危険」に当たるかは示さず、政権に裁量の余地を残している。

 このほか閣議決定では、武力攻撃に至らない侵害▽国連決議に基づく多国籍軍支援▽国連平和維持活動(PKO)−−などで自衛隊の活動を拡大するため、法整備を進める方針も示した。【青木純、高本耕太】
---毎日新聞(26.7.2)




安倍首相「戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく」 集団的自衛権行使容認で(26.7.2)


政府は1日の臨時閣議で、従来の憲法解釈を変更して限定的に集団的自衛権の行使を容認することを決定した。安倍晋三首相は閣議後に記者会見し、「国民の命、平和な暮らしを守るため、切れ目のない安全保障法制の整備が必要だ。世界の平和と安定に日本はこれまで以上に貢献する」と述べ、「積極的平和主義」に基づく安全保障政策の転換であることを強調した。

集団的自衛権の行使容認について、会見で説明する安倍晋三首相 =1日午後6時15分、首相官邸 (代表撮影)

 首相は記者会見で、行使容認の意義について「万全の備えをすること自体が、日本に戦争を仕掛けようとするたくらみをくじく大きな力を持つ」と述べ、日本に対する攻撃の抑止力を高める効果を強調。行使の裏付けとなる自衛隊法などの関連法改正を秋の臨時国会で実現させることを目指し、政府内に特別チームを立ち上げる考えを表明した。

 一方で、「憲法が許すのはわが国の存立を全うし国民を守るための自衛の措置だけだ。外国の防衛自体を目的とする武力行使は今後も行わない」と断言した。

 首相は臨時閣議に先立ち、公明党の山口那津男代表と官邸で会談し、限定的容認を確認した。首相は記者会見で、新たに打ち出した武力行使の3要件について「明確な歯止めとなっている」と語り、行使容認に慎重姿勢だった公明党への配慮をにじませた。

 閣議決定は、他国に対する武力攻撃が発生した場合に自衛権発動を認める要件として、わが国や「わが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃」が発生し、国の存立や国民の権利が「根底から覆される明白な危険」がある場合、必要最小限度の武力を行使することは「自衛のための措置として憲法上許容される」とした。他国に対する武力攻撃でもわが国の存立を脅かし得るとも指摘した。

 また、国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊が離れた場所の他国部隊や国連職員を助ける「駆け付け警護」を可能とするため、武器使用基準を緩和する方向性を盛り込んだ。横畠裕介内閣法制局長官は「憲法9条との整合性に配慮し、憲法解釈として可能な範囲内のものになっている」と述べた。
ーーー産経新聞(26.7.2)





集団的自衛権の行使を認めた閣議決定(全文)(26.7.1)


1日開かれた臨時閣議の閣議決定は次の通り。

     ◇

 国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について

2014年7月1日

国家安全保障会議決定

閣議決定

 我が国は、戦後一貫して日本国憲法の下で平和国家として歩んできた。専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国とはならず、非核三原則を守るとの基本方針を堅持しつつ、国民の営々とした努力により経済大国として栄え、安定して豊かな国民生活を築いてきた。また、我が国は、平和国家としての立場から、国際連合憲章を遵守(じゅんしゅ)しながら、国際社会や国際連合を始めとする国際機関と連携し、それらの活動に積極的に寄与している。こうした我が国の平和国家としての歩みは、国際社会において高い評価と尊敬を勝ち得てきており、これをより確固たるものにしなければならない。

 一方、日本国憲法の施行から67年となる今日までの間に、我が国を取り巻く安全保障環境は根本的に変容するとともに、更に変化し続け、我が国は複雑かつ重大な国家安全保障上の課題に直面している。国際連合憲章が理想として掲げたいわゆる正規の「国連軍」は実現のめどが立っていないことに加え、冷戦終結後の四半世紀だけをとっても、グローバルなパワーバランスの変化、技術革新の急速な進展、大量破壊兵器や弾道ミサイルの開発及び拡散、国際テロなどの脅威により、アジア太平洋地域において問題や緊張が生み出されるとともに、脅威が世界のどの地域において発生しても、我が国の安全保障に直接的な影響を及ぼし得る状況になっている。さらに、近年では、海洋、宇宙空間、サイバー空間に対する自由なアクセス及びその活用を妨げるリスクが拡散し深刻化している。もはや、どの国も一国のみで平和を守ることはできず、国際社会もまた、我が国がその国力にふさわしい形で一層積極的な役割を果たすことを期待している。

 政府の最も重要な責務は、我が国の平和と安全を維持し、その存立を全うするとともに、国民の命を守ることである。我が国を取り巻く安全保障環境の変化に対応し、政府としての責務を果たすためには、まず、十分な体制をもって力強い外交を推進することにより、安定しかつ見通しがつきやすい国際環境を創出し、脅威の出現を未然に防ぐとともに、国際法にのっとって行動し、法の支配を重視することにより、紛争の平和的な解決を図らなければならない。

 さらに、我が国自身の防衛力を適切に整備、維持、運用し、同盟国である米国との相互協力を強化するとともに、域内外のパートナーとの信頼及び協力関係を深めることが重要である。特に、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定のために、日米安全保障体制の実効性を一層高め、日米同盟の抑止力を向上させることにより、武力紛争を未然に回避し、我が国に脅威が及ぶことを防止することが必要不可欠である。その上で、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを断固として守り抜くとともに、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の下、国際社会の平和と安定にこれまで以上に積極的に貢献するためには、切れ目のない対応を可能とする国内法制を整備しなければならない。

 5月15日に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」から報告書が提出され、同日に安倍内閣総理大臣が記者会見で表明した基本的方向性に基づき、これまで与党において協議を重ね、政府としても検討を進めてきた。今般、与党協議の結果に基づき、政府として、以下の基本方針に従って、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために必要な国内法制を速やかに整備することとする。

 1 武力攻撃に至らない侵害への対処

 (1)我が国を取り巻く安全保障環境が厳しさを増していることを考慮すれば、純然たる平時でも有事でもない事態が生じやすく、これにより更に重大な事態に至りかねないリスクを有している。こうした武力攻撃に至らない侵害に際し、警察機関と自衛隊を含む関係機関が基本的な役割分担を前提として、より緊密に協力し、いかなる不法行為に対しても切れ目のない十分な対応を確保するための態勢を整備することが一層重要な課題となっている。

 (2)具体的には、こうした様々な不法行為に対処するため、警察や海上保安庁などの関係機関が、それぞれの任務と権限に応じて緊密に協力して対応するとの基本方針の下、各々(おのおの)の対応能力を向上させ、情報共有を含む連携を強化し、具体的な対応要領の検討や整備を行い、命令発出手続を迅速化するとともに、各種の演習や訓練を充実させるなど、各般の分野における必要な取組を一層強化することとする。

 (3)このうち、手続の迅速化については、離島の周辺地域等において外部から武力攻撃に至らない侵害が発生し、近傍に警察力が存在しない場合や警察機関が直ちに対応できない場合(武装集団の所持する武器等のために対応できない場合を含む。)の対応において、治安出動や海上における警備行動を発令するための関連規定の適用関係についてあらかじめ十分に検討し、関係機関において共通の認識を確立しておくとともに、手続を経ている間に、不法行為による被害が拡大することがないよう、状況に応じた早期の下令や手続の迅速化のための方策について具体的に検討することとする。

 (4)さらに、我が国の防衛に資する活動に現に従事する米軍部隊に対して攻撃が発生し、それが状況によっては武力攻撃にまで拡大していくような事態においても、自衛隊と米軍が緊密に連携して切れ目のない対応をすることが、我が国の安全の確保にとっても重要である。自衛隊と米軍部隊が連携して行う平素からの各種活動に際して、米軍部隊に対して武力攻撃に至らない侵害が発生した場合を想定し、自衛隊法第95条による武器等防護のための「武器の使用」の考え方を参考にしつつ、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含む。)に現に従事している米軍部隊の武器等であれば、米国の要請又(また)は同意があることを前提に、当該武器等を防護するための自衛隊法第95条によるものと同様の極めて受動的かつ限定的な必要最小限の「武器の使用」を自衛隊が行うことができるよう、法整備をすることとする。

 2 国際社会の平和と安定への一層の貢献

 (1)いわゆる後方支援と「武力の行使との一体化」

 ア いわゆる後方支援と言われる支援活動それ自体は、「武力の行使」に当たらない活動である。例えば、国際の平和及び安全が脅かされ、国際社会が国際連合安全保障理事会決議に基づいて一致団結して対応するようなときに、我が国が当該決議に基づき正当な「武力の行使」を行う他国軍隊に対してこうした支援活動を行うことが必要な場合がある。一方、憲法第9条との関係で、我が国による支援活動については、他国の「武力の行使と一体化」することにより、我が国自身が憲法の下で認められない「武力の行使」を行ったとの法的評価を受けることがないよう、これまでの法律においては、活動の地域を「後方地域」や、いわゆる「非戦闘地域」に限定するなどの法律上の枠組みを設定し、「武力の行使との一体化」の問題が生じないようにしてきた。

 イ こうした法律上の枠組みの下でも、自衛隊は、各種の支援活動を着実に積み重ね、我が国に対する期待と信頼は高まっている。安全保障環境が更に大きく変化する中で、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定のために、自衛隊が幅広い支援活動で十分に役割を果たすことができるようにすることが必要である。また、このような活動をこれまで以上に支障なくできるようにすることは、我が国の平和及び安全の確保の観点からも極めて重要である。

 ウ 政府としては、いわゆる「武力の行使との一体化」論それ自体は前提とした上で、その議論の積み重ねを踏まえつつ、これまでの自衛隊の活動の実経験、国際連合集団安全保障措置の実態等を勘案して、従来の「後方地域」あるいはいわゆる「非戦闘地域」といった自衛隊が活動する範囲をおよそ一体化の問題が生じない地域に一律に区切る枠組みではなく、他国が「現に戦闘行為を行っている現場」ではない場所で実施する補給、輸送などの我が国の支援活動については、当該他国の「武力の行使と一体化」するものではないという認識を基本とした以下の考え方に立って、我が国の安全の確保や国際社会の平和と安定のために活動する他国軍隊に対して、必要な支援活動を実施できるようにするための法整備を進めることとする。

 (ア)我が国の支援対象となる他国軍隊が「現に戦闘行為を行っている現場」では、支援活動は実施しない。

 (イ)仮に、状況変化により、我が国が支援活動を実施している場所が「現に戦闘行為を行っている現場」となる場合には、直ちにそこで実施している支援活動を休止又は中断する。

 (2)国際的な平和協力活動に伴う武器使用

 ア 我が国は、これまで必要な法整備を行い、過去20年以上にわたり、国際的な平和協力活動を実施してきた。その中で、いわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用や「任務遂行のための武器使用」については、これを「国家又は国家に準ずる組織」に対して行った場合には、憲法第9条が禁ずる「武力の行使」に該当するおそれがあることから、国際的な平和協力活動に従事する自衛官の武器使用権限はいわゆる自己保存型と武器等防護に限定してきた。

 イ 我が国としては、国際協調主義に基づく「積極的平和主義」の立場から、国際社会の平和と安定のために一層取り組んでいく必要があり、そのために、国際連合平和維持活動(PKO)などの国際的な平和協力活動に十分かつ積極的に参加できることが重要である。また、自国領域内に所在する外国人の保護は、国際法上、当該領域国の義務であるが、多くの日本人が海外で活躍し、テロなどの緊急事態に巻き込まれる可能性がある中で、当該領域国の受入れ同意がある場合には、武器使用を伴う在外邦人の救出についても対応できるようにする必要がある。

 ウ 以上を踏まえ、我が国として、「国家又は国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場しないことを確保した上で、国際連合平和維持活動などの「武力の行使」を伴わない国際的な平和協力活動におけるいわゆる「駆け付け警護」に伴う武器使用及び「任務遂行のための武器使用」のほか、領域国の同意に基づく邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動ができるよう、以下の考え方を基本として、法整備を進めることとする。

 (ア)国際連合平和維持活動等については、PKO参加5原則の枠組みの下で、「当該活動が行われる地域の属する国の同意」及び「紛争当事者の当該活動が行われることについての同意」が必要とされており、受入れ同意をしている紛争当事者以外の「国家に準ずる組織」が敵対するものとして登場することは基本的にないと考えられる。このことは、過去20年以上にわたる我が国の国際連合平和維持活動等の経験からも裏付けられる。近年の国際連合平和維持活動において重要な任務と位置付けられている住民保護などの治安の維持を任務とする場合を含め、任務の遂行に際して、自己保存及び武器等防護を超える武器使用が見込まれる場合には、特に、その活動の性格上、紛争当事者の受入れ同意が安定的に維持されていることが必要である。

 (イ)自衛隊の部隊が、領域国政府の同意に基づき、当該領域国における邦人救出などの「武力の行使」を伴わない警察的な活動を行う場合には、領域国政府の同意が及ぶ範囲、すなわち、その領域において権力が維持されている範囲で活動することは当然であり、これは、その範囲においては「国家に準ずる組織」は存在していないということを意味する。

 (ウ)受入れ同意が安定的に維持されているかや領域国政府の同意が及ぶ範囲等については、国家安全保障会議における審議等に基づき、内閣として判断する。

 (エ)なお、これらの活動における武器使用については、警察比例の原則に類似した厳格な比例原則が働くという内在的制約がある。

 3 憲法第9条の下で許容される自衛の措置

 (1)我が国を取り巻く安全保障環境の変化に対応し、いかなる事態においても国民の命と平和な暮らしを守り抜くためには、これまでの憲法解釈のままでは必ずしも十分な対応ができないおそれがあることから、いかなる解釈が適切か検討してきた。その際、政府の憲法解釈には論理的整合性と法的安定性が求められる。したがって、従来の政府見解における憲法第9条の解釈の基本的な論理の枠内で、国民の命と平和な暮らしを守り抜くための論理的な帰結を導く必要がある。

 (2)憲法第9条はその文言からすると、国際関係における「武力の行使」を一切禁じているように見えるが、憲法前文で確認している「国民の平和的生存権」や憲法第13条が「生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利」は国政の上で最大の尊重を必要とする旨定めている趣旨を踏まえて考えると、憲法第9条が、我が国が自国の平和と安全を維持し、その存立を全うするために必要な自衛の措置を採ることを禁じているとは到底解されない。一方、この自衛の措置は、あくまで外国の武力攻撃によって国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるという急迫、不正の事態に対処し、国民のこれらの権利を守るためのやむを得ない措置として初めて容認されるものであり、そのための必要最小限度の「武力の行使」は許容される。これが、憲法第9条の下で例外的に許容される「武力の行使」について、従来から政府が一貫して表明してきた見解の根幹、いわば基本的な論理であり、昭和47年10月14日に参議院決算委員会に対し政府から提出された資料「集団的自衛権と憲法との関係」に明確に示されているところである。

 この基本的な論理は、憲法第9条の下では今後とも維持されなければならない。

 (3)これまで政府は、この基本的な論理の下、「武力の行使」が許容されるのは、我が国に対する武力攻撃が発生した場合に限られると考えてきた。しかし、冒頭で述べたように、パワーバランスの変化や技術革新の急速な進展、大量破壊兵器などの脅威等により我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けている状況を踏まえれば、今後他国に対して発生する武力攻撃であったとしても、その目的、規模、態様等によっては、我が国の存立を脅かすことも現実に起こり得る。

 我が国としては、紛争が生じた場合にはこれを平和的に解決するために最大限の外交努力を尽くすとともに、これまでの憲法解釈に基づいて整備されてきた既存の国内法令による対応や当該憲法解釈の枠内で可能な法整備などあらゆる必要な対応を採ることは当然であるが、それでもなお我が国の存立を全うし、国民を守るために万全を期す必要がある。

 こうした問題意識の下に、現在の安全保障環境に照らして慎重に検討した結果、我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において、これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに、必要最小限度の実力を行使することは、従来の政府見解の基本的な論理に基づく自衛のための措置として、憲法上許容されると考えるべきであると判断するに至った。

 (4)我が国による「武力の行使」が国際法を遵守して行われることは当然であるが、国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解する必要がある。憲法上許容される上記の「武力の行使」は、国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある。この「武力の行使」には、他国に対する武力攻撃が発生した場合を契機とするものが含まれるが、憲法上は、あくまでも我が国の存立を全うし、国民を守るため、すなわち、我が国を防衛するためのやむを得ない自衛の措置として初めて許容されるものである。

 (5)また、憲法上「武力の行使」が許容されるとしても、それが国民の命と平和な暮らしを守るためのものである以上、民主的統制の確保が求められることは当然である。政府としては、我が国ではなく他国に対して武力攻撃が発生した場合に、憲法上許容される「武力の行使」を行うために自衛隊に出動を命ずるに際しては、現行法令に規定する防衛出動に関する手続と同様、原則として事前に国会の承認を求めることを法案に明記することとする。

 4 今後の国内法整備の進め方

 これらの活動を自衛隊が実施するに当たっては、国家安全保障会議における審議等に基づき、内閣として決定を行うこととする。こうした手続を含めて、実際に自衛隊が活動を実施できるようにするためには、根拠となる国内法が必要となる。政府として、以上述べた基本方針の下、国民の命と平和な暮らしを守り抜くために、あらゆる事態に切れ目のない対応を可能とする法案の作成作業を開始することとし、十分な検討を行い、準備ができ次第、国会に提出し、国会における御審議を頂くこととする。

(以上)
ーーー朝日新聞(26.7.1)







集団的自衛権、8事例全て可能に 自公調整が決着、法整備へ(26.6.28)


 政府は、集団的自衛権の行使容認が必要だとして与党に示した「邦人輸送中の米輸送艦の防護」や「米国に向かうミサイルの迎撃」「強制的な停船検査」など8事例全てを可能とする法整備に本格的に着手する方針を固めた。行使容認の憲法解釈変更が7月1日に閣議決定される見通しとなったのを受けた対応。政府筋が27日、明らかにした。自民、公明両党の27日の協議で解釈変更に関して大きな異論はなく、閣議決定の前提となる与党調整は事実上決着した。

 米艦防護や停船検査が可能になれば、仮に米国と北朝鮮が交戦状態に陥った場合、自衛隊参戦の可能性が高まる。

ーーー(共同)東京新聞(26.6.28)






【解説】 集団安全保障  戦闘参加、首相は否定 自衛隊の危険増大も(26.5.23)


安倍晋三首相に提出された安全保障に関する有識者懇談会の報告書は、集団的自衛権以外にも幅広いテーマを取り上げています。武力行使を伴う集団安全保障への参加も「憲法上の制約はない」と結論付けました。

 Q 集団的自衛権と名前が似ています。何が違うのですか。

 A 集団安全保障は、他国を侵略した国に対し、国連を中心とした国際社会が団結して制裁を科すことで平和維持を図る仕組みです。1990年にクウェート侵攻したイラク軍を、国連安全保障理事会決議に基づく米国中心の多国籍軍が攻撃した例があります。集団的自衛権が、同盟国など密接な関係にある国への武力攻撃を自国への攻撃と見なして実力で阻止する、主に2国間の関係であるのに対し、集団安全保障は多国間の枠組みを意味します。

 Q 首相の考えは。

 A 政府は、武力行使を伴う集団安全保障への参加は憲法に抵触するとの立場です。首相も15日の記者会見で「自衛隊が湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは決してない」と否定しました。ただ、自民党の石破茂幹事長らは将来的な可能性に含みを残しています。

 Q 現段階では何も変わらないのですか。

 A 政権内では多国籍軍への参加は無理だとしても、燃料補給や医療支援などの後方支援を検討すべきだとの声があります。従来、政府が憲法で禁じられた「他国の武力行使との一体化」に当たると解釈してきた活動です。一体化論について、報告書は「わが国特有の概念」で「国際平和協力活動の経験を積んだ今日ではその役割を終えた」と言い切りました。今後論議を呼びそうです。

 Q 「駆け付け警護」という言葉も耳にするようになりました。

 A 国連平和維持活動(PKO)に参加中の他国軍部隊などが襲われた場合、離れた場所にいた自衛隊が援護することです。政府は自衛隊の海外での武器使用は正当防衛などに限られるとして、これまで認めてきませんでした。首相は会見で「(他国軍部隊から救助要請を受けても)自衛隊は見捨てるしかない。これが現実だ」と見直しを訴えました。

 Q 実現の可能性は。

 A 鍵を握る公明党は柔軟姿勢を示しており、議論が進む見通しです。ただ、自衛隊自身が武装勢力の攻撃にさらされる危険性が増大するのは確実です。武器使用基準の緩和が検討される見込みですが、「海外での武力行使」に至らないよう、どんな歯止め策を設けるかが焦点となります。

ーーー共同通信(26.5.23)







【平和国家どこへ】  論点変遷「目くらまし」 自衛権、理解進まぬまま(26.6.19)


砂川事件の最高裁判決、有識者会議の報告書、邦人輸送の米艦防護、自衛権発動の新要件、閣議決定の文案…。集団的自衛権に関する論議は、論点が次々に変わっていく。識者は「目くらましのようにどんどん出され、国民の理解も進まないうちになし崩し的に国の大方針が転換されようとしている」と批判する。


集団自衛権を巡る動き

 ▽後景に

 「安倍晋三首相の言動を見ていると、どんな小さな風穴でもいいからあけたい、集団的自衛権行使を認めさせることに意義があるという考えが見て取れる」。元防衛官僚の 小池清彦 (こいけ・きよひこ) 新潟県加茂市長は18日、東京都内で開かれた集会で語った。

 政府や自民党は安倍首相の強い意欲を背景に、行使容認に向け、この3カ月間にさまざまな論拠や方針、事例を繰り出してきた。

 3月17日の自民党総務懇談会で行使容認をめぐり慎重論が続出したものの、同31日の党安全保障法制整備推進本部の会合で高村正彦副総裁が1959年の最高裁判決を基に限定容認論を展開すると、ぴたりと収まった。

 ただ、公明党などから「判決は個別的自衛権が前提だった」と異論が噴出。すると政府側は代わって自衛措置の許容範囲を示した72年の政府見解を持ち出す。見解は集団的自衛権の行使は認められないと結論づけているが、首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が5月15日に出した報告書にも引用された。

 安保法制懇の報告書が出るまでは、安倍首相が国会質問で詳細な点になると「いま有識者が議論している」と繰り返し答弁したこともあって、報告書の内容が焦点だった。しかし、報告書が出た直後に首相が記者会見し、邦人を輸送する米艦の防護など具体例を挙げて説明したことなどから、報告書はあっという間に後景に退いた。

 ▽加速

 同27日には自民、公明両党の与党協議で、政府が安全保障法制の課題として15の事例を提示。協議では個々の事例についての検討を始めたが、想定通りに進まないことに政府、自民党側がしびれを切らし、6月13日には高村氏が自衛権発動の新たな3要件を示し加速を図る。

 さらに17日の与党協議には、政府が憲法解釈変更に向けた閣議決定の文案概要を提示して畳み掛けた。いま、政府、自民党と公明党の間ではこの文言の調整やシーレーン(海上交通路)での機雷掃海の扱いが論点となっている。

  中野晃一 (なかの・こういち) 上智大教授(政治学)は「何が問題点なのか分からなくするための目くらましだ」と手厳しい。「15事例に集団的自衛権と関係のないケースを入れたり、机上の空論のような事例を 俎上 (そじょう) に載せたりすることで『こういう場合なら認められるでしょ』と程度の問題にすり替えようとしている」とも指摘する。

 与党協議について中野教授は「お芝居にみえる。閣議決定の文言の手直しで議論の収束を図ろうとしているのだろう」と突き放した。

ーーー共同通信(26.6.19)







集団的自衛権を憲法許容 閣議決定案の全容判明(26.6.19)

政府が自民、公明両党幹部に提示した安全保障法制に関する閣議決定の原案全容が18日、判明した。従来の憲法解釈で禁じられてきた集団的自衛権の行使に関し、日本への攻撃がなくても他国に対する武力攻撃で「わが国の存立が脅かされ、国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される恐れがある場合があり得る」と指摘。他に適当な手段がなく必要最小限度にとどまるなら武力行使が憲法で許容されるとした。政府は原案を基に7月初旬までの閣議決定を目指す。日本の安全保障政策の大転換となる。

 解釈変更に関し「国際情勢が根本的に変容し、どの国も一国のみで平和を守れない」と訴えた。
ーーー共同通信(26.6.19)






邦人輸送の米艦防護「賛成」75%…読売調査(26.6.2)

読売新聞社は5月30日~6月1日、全国世論調査を実施した。

 集団的自衛権行使の憲法解釈見直しなどを巡り、政府が与党の協議会に提示した15事例のうち、5事例について賛否を聞いたところ、紛争中の外国から避難する邦人を乗せた米輸送艦を自衛隊が守れるようにすることに「賛成」との回答が75%に上るなど、4事例で賛成が半数を超えた。個別事例で国民の理解が広がっていることは、今後の与党協議の行方に影響しそうだ。

 支持政党別にみると、邦人輸送中の米輸送艦を自衛隊が防護できるようにすることに「賛成」と答えた人は、憲法解釈見直しに慎重な公明党の支持層でも8割弱、自民支持層では8割強に上った。

 集団的自衛権に関連する他の事例では、海上交通路周辺での紛争中に、自衛隊が国際的な機雷掃海活動に参加できるようにすることに「賛成」が74%を占めた。米国のグアムやハワイに向かう弾道ミサイルを、自衛隊が撃ち落とせるようにすることは、「賛成」44%と「反対」43%が拮抗きっこうした。

 集団的自衛権とは別に、政府が法整備を検討している「グレーゾーン事態」の事例では、外国の武装集団が日本の離島を占拠するなど、警察や海上保安庁が対応しきれない可能性に備え、自衛隊の迅速な出動を可能にすることに「賛成」との回答が80%に達した。
---読売新聞(2014年06月02日 01時16分






集団的自衛権 道民に及ぶ影響 命を脅かす危険はらむ(26.6.1)

 集団的自衛権の行使容認は海外での武力使用に道を開き、国民の命を危険にさらす。

 とりわけ北海道はその可能性が高い。道内には自衛隊の施設が多く、隊員数は陸自だけでも全国の4分の1に当たる約3万7千人に上る。優先的に海外派遣を命じられる部隊にも指定されている。

 道内の隊員の多くが戦場に派遣される恐れがある。しかも、戦火が拡大すれば、道内の防衛施設が攻撃対象となり、住民が巻き添えになる懸念も拭えない。

 これでは日本が掲げる平和主義は根底から崩れる。そんな国につくり替えることは認められない。

 集団的自衛権の行使容認によって、安倍晋三首相は日米関係の強化を目指している。その意味からも道民への影響が危惧される。

 例えば、陸上自衛隊矢臼別演習場で毎年行われている沖縄駐留米海兵隊の訓練だ。

 昨年6月にりゅう弾の場外着弾という重大事故が起きたが、再発防止策は不十分で、地域の不安は解消されていない。にもかかわらず今年も訓練が行われる予定だ。

 日米安全保障体制の重視が進めば、秘密保護が強化され、地元への情報提供がこれまで以上に縮小される恐れがある。

 米軍訓練の受け入れ枠拡大に向けた要請も予想される。

 道民にさらなる負担と不安を押しつける施策を許容するわけにはいかない。

 与党協議では集団的自衛権に先立ち、武力攻撃に至らない「グレーゾーン」や国連平和維持活動(PKO)を含む国際協力に関する議論を始めている。

 PKOには道内隊員の多くが参加している。5月には第5旅団(帯広)などの75人が事実上内戦状態にある南スーダンへ出発した。

 危険地域への派遣を認めていないPKO協力法の5原則に反するとの厳しい指摘があるにもかかわらずだ。

 道内の隊員からは「死ぬ覚悟をして自衛隊に入った訳ではない」との声が漏れた。

 だが、首相は多国籍軍などへの「後方支援」を「戦闘地域」でも可能にする考えだ。「グレーゾーン」や国際協力での武器使用拡大にも意欲を見せている。

 このまま突き進めば、隊員はますます危険な状態に置かれる。

 道民の命を脅かすこんな改変は即座に撤回すべきだ。
ーーー北海道新聞(26.6.1)







日米同盟と具体的事例 同盟の抑止力強化訴え 想定事例に「無理」も

安倍晋三首相や安全保障に関する懇談会報告書は、集団的自衛権の行使が必要な具体的な事例を挙げて、憲法解釈変更への理解を求めています。

 Q 首相は15日の記者会見でパネルを掲げて事例を説明していました。

 A 首相が挙げたのは、近隣国で戦争が起きた時に、脱出する日本人を乗せた米軍輸送船を自衛隊の船が寄り添って 防護 するケースです。

 Q 集団的自衛権を行使しないと自衛隊は助けに行けないのですか。

 A 日本人が乗っていても米艦は国際法上、米国の一部で、一般的には米国への攻撃とみなされます。日本が攻撃を受けていないのに、米国への攻撃を防ぐことは集団的自衛権の行使に該当します。しかし、現実には、なぜ日本人が米軍の船で輸送されるのか、そこまで情勢が悪化する前に、民間人のほとんどは他の手段で脱出しているのではないか、などと想定に無理があるとの見方も出ています。

 Q ほかにどんな事例を考えていますか。

 A 報告書は、ある国に対する武力攻撃が発生して米国が支援に入っている時に、自衛隊が敵対する国に武器を運ぶ船に対して強制的に立ち入り検査を実施するべきだと提言しています。
 日本が輸入する原油の多くが通過する海峡に、敵対する国が機雷をまいてシーレーン(海上交通路)を封鎖した場合に、米国など各国と一緒に機雷を除去する掃海活動に参加できるようにすべきだとも指摘しています。米国に向かうミサイルを迎撃するのも集団的自衛権の行使に当たります。

 Q 米国のために行使できるようにするのですか。

 A 政府は米国だけに限定した行使を想定しているわけではありませんが、報告書は「米国が攻撃を受けているのに日本が十分に対応できないならば、日米同盟に甚大な影響が及び、日本の存立自体に影響を与える」と対米関係を重視しています。

 Q 逆に、米国の戦争に巻き込まれる恐れはないのですか。

 A 首相は会見で「あらゆる事態に対処できるからこそ、抑止力が高まり、紛争が回避され、わが国が戦争に巻き込まれることがなくなる」と訴えました。しかし、2001年の米中枢同時テロを受けた米国のアフガニスタン攻撃を支援するため、英国やオーストラリアなどが集団的自衛権を根拠に参戦しました。日本はインド洋での給油支援にとどめましたが、当時、集団的自衛権の行使が可能だったら、さらなる行動を求められた可能性はあります。

ーーー共同通信(26.5.28) 





集団的自衛権:図解






安保政策の主な論点;
集団的自衛権の行使、集団安全保障、個別的自衛権



集団安全保障と集団的自衛権の違い





集団的自衛権の4タイプ1


集団的自衛権の4タイプ2



集団的自衛権の行使でイメージする自衛隊の活動



過去の集団的自衛権の行使ー主要事例



日本周辺の主な兵力



改憲の世論調査(2013.7)








集団的自衛権:政府が示すグレーゾーンと15事例



事例1.離島等における不法行為への対処



政府が想定する15事例中、米軍を守る事例



米国を狙った弾道ミサイルの遊撃
事例3、9、11、13で検討




従来の政府の立場;自衛権はあるが行使を認められない。--安倍総理は容認のスタンス
事例3、9、11、13で検討




政府が想定するグレーゾーン事態の事例



事例10で検討


機雷掃討;機雷の種類に対応
事例14で検討


政府が与党に示した15事例


政府が与野党と協議する15事例2








集団的自衛権:安倍首相 新たに2事例を提示

安倍晋三首相は28日、集団的自衛権の行使容認などを巡る衆院予算委員会の集中審議で、周辺有事の際に邦人を輸送する米輸送艦の防護について▽邦人以外の民間人を輸送する米艦の防護▽米国が借り上げた第三国船の防護−−も検討する考えを示した。政府は27日の自民、公明両党の協議で、集団的自衛権の行使容認を含む15事例を示したが、さらに新たな事例が追加された形だ。安倍政権が目指す集団的自衛権の行使容認の範囲が不明確で拡大解釈の余地があることが、首相自身の答弁で浮かんだ。

 首相は15日の記者会見で、自ら作製を指示したパネルを使って、邦人輸送の米艦防護を特別に取り上げ、必要性を強調していた。しかしこの日の予算委では、米艦防護のあり方について「日本人が乗っていないから駄目だということはあり得ない」と明言。「日本人の乗船の有無を前提に(米軍と共同の)避難計画を立てるのは現実的でない」とも指摘し、邦人が乗船していない米艦の防護も可能にすべきだとの認識を示した。

 さらに邦人が第三国の船で避難するケースについても「米国が外国の船を雇うこともある。それ以外のさまざまなケースが当然あり得る」と説明し、自衛隊による防護の可能性を示唆。ただ、武力攻撃を受けていない第三国の船の防護は、日本の集団的自衛権の行使に当たらないため、民主党の岡田克也氏は「集団的自衛権の具体例作りにあまりに熱心で、日本人を守る意識が欠落している」と追及。首相は「分かりやすい例として同盟国の米国の例を挙げた。一言も米国の船以外は駄目だと言ったことはない」と反論した。

 また首相は、15日の会見で「自衛隊が武力行使を目的として他国での戦闘に参加することは決してない」と強調したことについて「集団安全保障に、武力行使を目的として参加することはない」と説明。国連安保理決議に基づくイラクでの多国籍軍などには参加しないことを意味すると軌道修正した。北大西洋条約機構(NATO)加盟国が集団的自衛権を行使したアフガニスタン戦争を例に「武力行使を目的とした武装部隊の派兵は、個別的自衛権の行使でも許されない」と述べ、現行の憲法解釈を変更しても自衛隊は参加できないとの認識を示した。
ーーー毎日新聞(26.5.28)





各紙の社説


毎日新聞社説:集団的自衛権 説得力欠く首相の答弁(26.5.29)

なぜいま集団的自衛権の行使を認める必要があるのか。この根本的な問いに対し、安倍晋三首相は衆院予算委員会の集中審議で、安全保障環境の変化に対応し、国民の命と平和な暮らしを守るため、日米同盟を強化しなければならないと強調した。

 だが、その方法がなぜ集団的自衛権でなければならないのか、首相から納得のいく答えは示されなかったように思う。

 この日の審議は、首相が私的懇談会・安保法制懇の提言を受け、行使容認に向けた検討を正式表明してから初の本格的な国会論戦となった。

 朝鮮半島有事を念頭に、取り残された在留日本人を日本に向けて輸送中の米軍輸送艦を、自衛隊が集団的自衛権を行使して防護する事例などで、激しいやり取りがあった。

 例えば、民主党の岡田克也議員はこう主張した。集団的自衛権の概念を使うから米国艦船にだけ対処するおかしな結果になる。自衛隊の海上警備行動と似た概念で、日本人が乗っている船舶を国籍にかかわらず守れる仕組みを作るべきだ。

 安倍首相は「米国の船以外は駄目と言ったことはない」と反論した。

 だが、その国が武力攻撃を受けていなければ、日本は集団的自衛権を行使できない場合がある。そのとき、日本人を乗せた米国以外の船舶をどう守るかという問いに首相は直接、答えなかった。

 集団的自衛権を行使する際の要件や歯止めがあいまいなことも、改めて浮き彫りになった。

 安保法制懇の提言では「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性」がある場合に、政府が総合的に判断して行使できるよう求めている。

 審議では、米国の要請を断れず、正当性を欠いたまま集団的自衛権が乱用される恐れなどが指摘された。

 首相は、行使には法律の歯止めがかかるとしたうえで、行使は「権利であって義務ではない」「慎重に判断する」と述べたが、これでは安心して政府に判断を任せられない。

 政府は、ホルムズ海峡などシーレーン(海上交通路)での機雷掃海活動への参加も事例にあげている。シーレーン封鎖による原油供給の停滞という経済的理由を「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性」ととらえ、集団的自衛権行使にまで広げていいのかという疑問も出された。

 首相は、戦闘行動が目的ではなく、機雷除去という限定的行使だとして理解を求めた。

 だが、戦闘中の機雷除去は武力行使にあたるため反撃され、自衛隊が戦闘行動に入らざるを得なくなる可能性がある。戦争とはそういうものだ。どう歯止めをかけるつもりなのか、首相はきちんと示してほしい。
ーーー毎日新聞(26.5.29)





中日新聞社説;集団的自衛権 平和主義守り抜くなら(26.5.29)

国民の命と暮らしを守るには、軍事的対応の強化が唯一の回答だろうか。戦後日本の「繁栄の礎」を築いた平和主義という憲法の理念を、一内閣の判断で骨抜きにすることがあってはならない。

 安倍晋三首相の記者会見を受けて「集団的自衛権の行使」容認をめぐる本格的な国会論戦が始まった。きのうの衆院予算委員会に続き、きょうは参院外交防衛委に舞台を移して集中審議が行われる。

 首相は初日の論戦で「日本は七十年間、平和国家の歩みを進めてきた。その道から外れることはないし、これからもその道を歩んでいく」と強調した。同時に「国民の命と暮らしを守らないといけない」とも述べた。

 政府が果たすべき第一の役割は平和を維持し、国民の命と暮らしを守ることである。その点、首相の主張に異論はない。問題は、どうやって守るのかだ。

 例えば、政府が検討事例に挙げた、紛争地から避難する邦人を輸送する米輸送艦の防護である。

 首相は十五日の記者会見で、お年寄りや乳児を抱く母子を描いたイラストを示しながら、「彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない」と、行使容認の必要性を強調した。

 しかし、これは現実から懸け離れた極端な例である。米艦艇に輸送を頼らなければいけない緊迫した状況になるまで、お年寄りや乳児を抱える母子が紛争地に取り残されるだろうか。そうなるまで手を打たなかったとしたら、政府の怠慢にほかならない。

 首相はきのう「日本人が乗っていない船を護衛できないことはあり得ない」とも述べた。ついに馬脚を現したという感じだ。

 これでは、集団的自衛権の行使容認が、日本国民の命をどう守るかではなく、米軍の軍事行動と一体化することが主目的であると疑われても仕方があるまい。

 集団的自衛権は国連憲章で加盟国に認められた権利だが、安全保障理事会に報告されたこれまでの例を振り返ると、米国や旧ソ連など、大国による侵攻を正当化するものがほとんどだ。そのような権利の行使が、平和主義国家の歩みと相いれるだろうか。

 現実から懸け離れた事例を示して、お年寄りや乳児を抱えた母子を守らなくていいのかと情緒に訴え、一内閣の解釈変更で憲法の趣旨を変えてしまう。

 平和主義を守り抜くというのなら、そんな政治手法をまずは封印する必要があるのではないか。
---中日新聞(26.5.29)





朝日新聞社説;集団的自衛権―疑問が募る首相の答弁(26.5.29)

安倍首相が集団的自衛権の行使容認への検討を表明してから初めて、きのうの衆院予算委員会で国会論戦があった。
 憲法解釈の変更による行使容認に否定的な野党と首相との議論はかみ合わなかった。ただでさえわかりにくいこの問題の論点が、国民の前に明らかになったとは言い難い。
 はっきりしたのは、首相がめざす夏までの憲法解釈変更の閣議決定など、とうてい無理な相談だということだ。解釈変更の根拠についても、首相はまともに答えようとしなかった。
 私的懇談会の報告を受けた先日の記者会見で首相は、憲法前文や13条をもとに自衛の措置をとることを認めた72年の政府見解を引き、必要最小限度の集団的自衛権の行使に向けた研究を進めると表明した。……
ーーー朝日新聞(26.5.29)





「集団的自衛権」報告書 「産読日」「朝毎東」で賛否二分(26.5.21)

自衛隊活動の制約解けと産経

 政府の有識者会議が憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認を求める報告書を安倍晋三首相に提出し、首相は早速の記者会見で本格的な与党協議に入る考えを表明した。

 産経は「日本の平和と安全、国民の生命・財産を守るため、当然の政治判断がようやく行われようとしていることを高く評価したい」とし、読売も首相の方向性を「改めて支持したい」と、ともに歓迎した。日経は見出しの「憲法解釈の変更へ」に行使容認に対する賛意を示したものの、「国民の理解を得られるように丁寧な説明、粘り強い対話を求めたい」とやや慎重な姿勢をのぞかせている。

 3紙はいずれも、尖閣周辺や南シナ海で力による現状変更を図っている中国の脅威など安全保障環境の悪化に言及し、この事態を乗り切るには「日米同盟の信頼性を高め、抑止力を強化する必要がある」(産経)、「重大な事態にきちんと対処できないようでは、日米同盟や国際協調は成り立たない」(読売)などと訴えている。

 具体的には次のように書く。

 産経「米軍将兵は命をかけて日本の防衛にあたる。その同盟国が攻撃を受けているのに、近くにいる自衛隊が助けなければ、真の絆を強められるだろうか。日本の国際的信用も失墜しかねない」

日経「(財政難で)内向きになりがちな米国の目をアジアに向けさせるには、日本も汗を流してアジアひいては世界の安定に貢献し、日米同盟の絆を強める努力がいる」

 一方、行使容認に反対の朝日・毎日・東京は、憲法上許されないとの見解で一致している。「憲法に基づいて政治を行う立憲主義からの逸脱」(朝日)、「自衛権行使は必要最小限度の範囲にとどまるべきだ。(中略)集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるため憲法上許されない」(毎日)、「憲法を改正するのが筋」(東京)。

 「戦争への懸念」を強調しているのも共通点だ。「日本が攻撃されたわけではないのに、自衛隊の武力行使に道を開く。これはつまり、参戦するということである」(朝日)、「『戦争する』権利の行使を今、認める必要性がどこにあるのか」(東京)-など。

 この種の懸念に関して産経と読売は全く逆に、むしろ「戦争抑止のための行使容認」であることを力説している。「行使容認によって(戦争への)抑止力が向上する効果を生むとみるべきだ」(産経)、「行使を可能にしておくことで日米同盟を強化し、抑止力を高めて、紛争を未然に防止することにこそ主眼がある」(読売)。

 報告書はまた、尖閣に中国の偽装漁民が上陸した場合など武力攻撃手前の侵害である「グレーゾーン事態」にも「切れ目のない対応」ができるよう求めている。産経は「これに対応する領域警備の法整備は急務だ」と主張し、読売と日経は公明党との間で議論を深めるよう促した。3紙とも事態への対処は重要であるとの認識だ。

 だが、国連安保理決議に基づく多国籍軍への自衛隊参加などの有識者会議提言については、これら3紙は必ずしも論調を一にはしていない。

 安倍首相がこの提言を採用しない考えを示したことに批判的だったのは産経だけで、「疑問もないわけではない」とした上で「自衛隊の活動への強い制約を解くことが課題である。内外に表明している積極的平和主義の具体化へ、現実的対応を求めたい」と首相に注文をつけた。

 対して日経は「国際貢献のための武力行使を容認するくだりを首相が『採用できない』と明言したのは当然だ」と評価し、読売も特に批判はしていない。

 昨日から始まった与党協議の行方が注目されるが、とにもかくにも、わが国がもういいかげんに「普通の国」に戻らねばならないことだけは確かである。(清湖口敏)

■「集団的自衛権」報告書を受けた社説 

 産経

 ・「異質の国」脱却の一歩だ/行使容認なくして国民守れぬ

 朝日

 ・戦争に必要最小限はない

 毎日

 ・根拠なき憲法の破壊だ

 読売

 ・日本存立へ行使「限定容認」せよ/グレーゾーン事態法制も重要だ

 日経

 ・憲法解釈の変更へ丁寧な説明を

 東京

 ・行使ありきの危うさ

 〈注〉いずれも16日付
ーーー産経新聞(26.5.21)







自衛権国会論戦  徹底して問題点ただせ(26.5.29)

集団的自衛権をめぐり、本格的な国会論議が始まった。
 衆院予算委員会はきのう、安倍晋三首相が行使容認へ向けた憲法解釈変更の基本的方向性を示してから初めて集中審議を行った。
 首相は日米同盟を維持するため、集団的自衛権行使が必要だと強調し、従来の政府の憲法解釈では行使できないとして変更を目指す考えを重ねて表明した。
 しかし、首相の強い意向とは裏腹に国民の理解は深まっていない。与野党ともに拙速を避け、問題点を洗い出して国民に見える形で議論を尽くすべきだ。
 国会論議に先立ち、自民、公明両党が与党協議を始め、政府は検討材料として邦人輸送中の米艦防護など15事例を提示した。武力攻撃に至らない「グレーゾーン」を先行議論しているが、集団的自衛権の行使容認に対して公明は慎重姿勢を崩していない。
 それでも首相は、日米防衛協力指針の年内改定に間に合うように、今国会中に憲法解釈の変更を閣議決定することを諦めていないようだ。前のめりな姿勢が答弁から透けて見える。
 首相は「切れ目のない防衛体制を整えて抑止力を高め、国民の生命と財産を守る」として理解を求めた。自国への急迫不正の武力攻撃が発生した場合など「自衛権発動の3要件」の見直しの可能性や、国際平和維持へ自衛隊の後方支援活動の拡大にも言及した。議論すべき事柄は数多い。
 「一強多弱」の政治状況下、野党は今こそ存在感を示す必要がある。野党の先陣を切った民主党の岡田克也元代表は、集団的自衛権に対する党内の足並みがそろわないためか、わざわざ自らの立ち位置を示して質疑を始めた。これでは強い姿勢で論戦に臨めまい。
 集団的自衛権をめぐる首相会見を受けた共同通信社の世論調査で、行使容認への反対が48・1%と賛成を約9ポイント上回り、憲法解釈の変更も反対が根強い。内閣支持率も落ち込んだ。安倍政権の性急な動きに戸惑う国民の正直な思いが表れたといえる。
 昨今の中国の動向など日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化しているとはいえ、国是である平和主義の原則を変質させかねない問題である。大転換をごり押しで進めることは許されない。国会の場で必要な情報を全て示し、丁寧に議論を積み上げることが必要だ。
 集中審議はきょう、参院外交防衛委でも行われる。論議が深まるか、心して傾聴したい。

ーーー京都新聞 (2014年05月29日)






集団的自衛権に関する各紙の分析結果(メデイア ウオッチ;26.5.2)

各紙の分析結果:

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反対派の主な主張

  • 憲法改正の厳格な手続きが必要
  • 近隣国との関係が改善されない中では、緊張はかえって高まる
  • 米軍を守るべき状況でも、個別的自衛権で対応できる
  • 戦後日本の「平和主義」方針からの逸脱
  • 海外派兵につながるおそれ
  • 砂川事件判決は、集団的自衛権を念頭においたものではない。ご都合主義のこじつけ

賛成派の主な主張

  • 時代の変化に即した憲法解釈の変更は妥当
  • 安全保障情勢が悪化しており日米同盟の抑止力を強化するために必要
  • 米軍が攻撃されても日本は放置するしかないという状況は是正すべき
  • 「積極的平和主義」の具体化には不可欠
  • 一国平和主義は通用しない
  • 現行の憲法解釈と一定の論理的整合性を保っているバランスのとれた考え方

ーーーメデイアウオッチ(26.5.2)