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人類の世界を変える革新技術;人工光合成、iPS細胞、多孔性材料、など新技術の開発の様子、現況とや見通しの最新情報。

 
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多孔性材料(概要説明)


空気から資源を取り出す可能性を持つ、ジャングルジム等の空間を持つ構成の多孔性物質は、従来の技術より効率的に吸着、貯蔵、分離が可能と判明した。多孔性材料が、気体を効率的にコントロールして、メタノールエネルギーの実現させ、日本が資源大国になれるだろうか。

多孔性材料(たこうせいざいりょう, porous medium)とは、細孔が非常に沢山ある材料のこと。

細孔の大きさによって、ミクロポーラス材料、メソポーラス材料、マクロポーラス材料に分けられる。例えば、活性炭やゼオライトなどはミクロポーラス材料、MCMやFSMなどはメソポーラス材料、軽石などはマクロポーラス材料である。
主として、吸着剤や触媒担体に用いられる。
細孔径(pore-size)が異なることは、細孔中に取り込まれた分子の挙動が異なることを意味する。

ミクロポーラス材料では、細孔が小さい為に、取り込まれた分子は、液体のような挙動を示し、脱着する事は困難となる。 対して、メソポーラス材料では、タンパク質やDNAなどの大きい分子はともかく、通常の気体分子は、細孔中でも気体として振舞う。

作り方は、金属イオンと有機分子を混ぜて、ろ過するだけで基本的にできる。
金属イオンは銅、亜鉛、アルミニウム、クロム、マンガン、ニッケル等、と有機分子を混ぜるだけだが、組み合わせは無数で、目的に適合することは容易ではないが、激しい研究競争が繰り広げられてる。
空中の二酸化炭素と水を利用して、メタノールを作り、メタノールのエネルギーを多様化して、石油や天然ガスに代わる主幹エネルギーを目指す。






多孔性物質と貯蔵の組み合わせ



ニュース・最新情報



排ガスから一酸化炭素、効率的に分離 京大グループが材料開発(25.12.13)

一酸化炭素だけを製鉄所の排ガスなどから効率よく分離する機能性材料を、京都大物質―細胞統合システム拠点の北川進教授や松田亮太郎准教授らのグループが開発した。回収した一酸化炭素を化学原料に活用するのに役立つ成果で、米科学誌「サイエンス」で13日発表する。


一酸化炭素だけを分離できる材料の模式図。黄色で囲まれた穴に取り込まれる(松田亮太郎准教授提供)

 北川教授らは、微小な穴が無数に開いたジャングルジムのような構造を持つ多孔性金属錯体を作製。酸素など狙った分子を内部に取り込むさまざまな材料を開発している。

 グループは、銅の2価イオンと有機物質で作った多孔性金属錯体が一酸化炭素分子を効率的に取り込むことを発見した。一酸化炭素分子と空気中の大半を占める窒素分子は、大きさや沸点が似ており分離は非常に難しかったが、一酸化炭素分子にこの錯体の銅イオンが反応して穴の形が変わり、取り込んでいた。

 一酸化炭素は人には有害だが、合成樹脂の原料として活用されている。北川教授は「現在は零下約150度の低温で実験しているが、室温でも機能するよう改良し、10年後には実用化したい」と話している。
---京都新聞(25.12.13)





京大・排ガスから一酸化炭素を高選択的に分離・回収できる多孔性材料を開発
(25.12.13)

京都大学(京大)は12月13日、混合ガスの中から一酸化炭素(CO)を高選択的に分離・回収できる多孔性材料の開発に成功したことを発表した。

同成果は、同大 京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS)拠点長の北川進 教授、同 松田亮太郎 特定准教授、同 佐藤弘志 助教らによるもの。詳細は米国科学誌「Science」のオンライン速報版(Science Express)に掲載された。

環境負荷の低減技術として、酸素や一酸化炭素、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などのガス分子を効率よく分離・除去する技術が求められている。中でもCOは、炭素を含む物質が不完全燃焼する際に生じ、一酸化炭素中毒を引き起こすことで知られている。また自動車などの乗り物から出る排ガス中にも含まれているが、そのほとんどは白金などをベースとした触媒を用いて二酸化炭素(CO2)へと変換され、大気中に放出されているほか、鉄鋼業の製鉄プロセスにおいてもCOが副生ガスとして発生しており、こうした排ガスに含まれるCOの化成品材料への転用により、COおよびCO2排出問題の解決などにつなげようという取り組みが各所で進められてきた。

従来、ガス分子などを効率よく分離するためには、ナノオーダーの細孔(ナノ細孔)を有する「多孔性物質」が用いられてきた。ゼオライトや活性炭などはその典型例だが、そうした古くから用いられてきた材料は構造が単純なため、分子レベルでの高機能化が困難という課題があった。

こうした課題の解決に向け近年、金属イオンと有機配位子との複合化によって作られる「多孔性金属錯体(PCP/MOF)」と呼ばれる新しい物質が開発された。この物質は、分子レベルで細孔の大きさや形状、化学的性質を精密に設計することができるという特徴がある。しかし、COを混合ガスから分離する場合、空気や排ガスに大量に含まれる窒素(N2)とCOが、似たような性質を有しているため、一般的な材料では区別することが難しく、新たなメカニズムに基づく分離材料の開発が求められていた。

今回の研究では、生体内のヘモグロビンが持つ効率よく酸素を取り込んだり放出したりする仕組みを模倣することで、これまでになかった多孔性材料が開発できるのではないかと考え、新たな物質の開発に挑んだい。

具体的には、COと弱く相互作用する銅イオン(Cu2+)と、有機配位子である5-アジドイソフタル酸(aip)とを反応させ、目的のPCPを合成した。

合成の結果、同PCP内部には、1次元のトンネルのような形状をした直径0.9nmのナノ細孔(L)と0.4nmのナノ細孔(S)があり、ナノ細孔(S)の表面には銅イオンが規則正しく配列されていることを確認。COの取り込みに対して効果的に働く可能性があることが示されたほか、特定種類の分子の出し入れが起こるとナノ細孔のサイズ・形状が変化することが確認されたという。

また、ナノ細孔へのガス分子の取り込まれやすさを調べる目的で、一般的に区別することが難しいCOとN2の吸着等温線測定を行ったところ、過去に報告された物質には見られなかった非常にCOを取り込みやすいという現象が確認されたという。

そこで研究グループでは、この仕組みの原理の解明に向け、COを取り込む前後のPCPの構造決定に向け、理化学研究所放射光科学総合研究センター量子秩序研究グループの高田昌樹グループディレクターと協力し、大型放射光施設SPring-8の放射光X線(粉末回折ビームラインBL44B2)を用いて粉末X線回折測定を行ったところ、COを取り込む前の銅イオンが整列したナノ細孔(S)は、実は銅イオンと有機配位子に含まれる酸素原子が結合することで細孔サイズが小さくなった閉じた構造をとっていることを確認したほか、COを取り込んだ後はこの結合が切断され、代わりにCOが銅イオンと結合していることが判明した。

これにより孔の大きさが少し大きくなり、銅イオンの上に取り込まれたCOに加えて、ナノ細孔の中央部分にさらにCOが取り込まれていることが示された一方、N2分子は銅イオンとほとんど相互作用しないため、構造変化を引き起こすことがなく、ナノ細孔に取り込まれないという仕組みが示された。

さらに研究では、同PCPが効率的にCOを分離・回収できるかの調査として、さまざまな比率で混ざり合ったN2とCOの混合ガス(COの比率:10~80%)をPCPによって吸着(捕捉)させ、回収したガスの中にどのくらいCOが含まれるかの確認を行った。その結果、どのような比率の混合ガスであっても、非常に高い効率でCOを回収できることが判明したという。

なお、このCOが取り込まれることによって、さらに多くのCOを次々に細孔内部へ呼び込むといった仕組みは、既存の銅イオンを含むPCPでも生じないものであったことから、研究グループではこのような現象について「Self-accelerating sorption process(自己加速的な吸着プロセス)」と命名したとするほか、この材料を実用化することで排ガスからのCOの効率的分離による資源化や、シェールガスなどから水蒸気改質プロセスで発生させたCOガスの精製などを通じて社会に大きなインパクトを与えることが期待できるようになるとコメントしている。
ーーーマイナビニュース 2013年12月13日(金)






京大、光で一酸化窒素を自在に取り出せる多孔性材料を開発(25.10.28)

京都大学物質―細胞統合システム拠点(iCeMS)の北川進教授、古川修平准教授、ステファン・ディーリング助教、亀井謙一郎助教らは、光を使って一酸化窒素(NO)を自在に取り出せる多孔性構造体を開発した。そのうえで、材料を細胞培養基板に埋め込み、細胞の狙った場所をNOで刺激することに成功した。
 研究グループは、ニトロイミダゾールと亜鉛イオンで構成される多孔性金属錯体(PCP)の「NOF―1」というナノ細孔の結晶性材料を開発。NOをニトロ基として有機物に固定し、高密度で閉じ込めた。紫外光が当たるとニトロ基が分解されてNOを放出する仕組み。波長370ナノメートルのレーザー光を細胞培養基板上のNOF―1結晶に照射すると、NOが放出されて細胞は緑色に光ったという。
 ナノ細孔から出る分子は圧力や温度制御が必要だが、光は自在に制御できるため細胞への影響が少なく、必要な時に取り出せることで利点は大きいとみられる。
---日刊工業新聞(25.10.28)







光でガス分子を自在に取り出せる空間材料を開発 -記憶形成・血管拡張など、細胞内NO ガスの謎を知るカギに-(25.10.23)

京都大学(総長:松本紘)の北川進物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長・教授、古川修平iCeMS准教授、ステファン・ディーリングiCeMS助教らの研究グループは、一酸化窒素(NO)を光により自在に取り出すことが可能な多孔性構造体の開発に成功しました。さらに、亀井謙一郎iCeMS助教らのグループと協力し、この材料を細胞培養基板に埋め込むことで、細胞の狙った場所をNOで刺激することに成功しました。この成果は、数多くの生理現象に関係しているNOの役割の生体内での謎を解く、新しい手法として期待されます。

 NOは一般的には毒性のガスとして知られています。しかしながら、私たちの身体の中においては非常に重要なガスであり、生体内の様々な情報伝達の役割を担っていると考えられています。この驚くべき発見に対し、1998年にノーベル医学・生理学賞*3が授与されています。ところが、その細胞内における分子レベルでの役割は、現在もあまり解明されていませんでした。

 今回の研究では、有機物と無機物からなる「多孔性金属錯体(PCPもしくはMOF、以下『PCP』という)*4」というナノ細孔をもつ結晶性の多孔性材料を用いてNOを高密度に閉じ込め、光を当てた時のみ素早く取り出すことのできる物質を開発しました。この物質を細胞培養基板の中に埋め込み、レーザーを用いて狙った場所にのみ光を当てることで、特定の細胞にNOを取り込ませることが可能になりました。また、この細胞培養基板は、他にも数多くの細胞種(ES/iPS細胞、神経細胞など)の培養・刺激試験に応用できます。

 本成果により、NOが直接関与しているとされる血管拡張、記憶形成、免疫、代謝などの生物学・医学分野において、細胞の中でのNOの役割解明に寄与することが期待されます。

 本成果は2013年10月25日10時(英国夏時間)に英オンライン科学誌「Nature Communications (ネイチャーコミュニケーションズ)」で公開されました。
---都大学、細胞統合システム拠点(25.10.23)





光で一酸化窒素、自在に取り出し 医療実験への応用期待(25.10.26)

京都大物質−細胞統合システム拠点の古川修平准教授らの研究グループは、光を照射することで一酸化窒素(NO)を自由に取り出すことができる素材を開発し、25日付の英科学誌電子版に掲載された。


紫外線を当て、一酸化窒素を放出させることで細胞を自在に緑色に発光させることに成功した=古川修平准教授提供

 一酸化窒素は血管の拡張作用や人工多能性幹細胞(iPS細胞)の分化作用に関わっているとされるが、一酸化窒素を自在に取り出すのは困難なため、研究が進んでいなかった。開発した素材を医療実験に応用できれば、一酸化窒素の役割や有効な活用法について研究が進むことが期待される。

 この素材は、金属と有機分子で作られる格子状の構造で、100万分の1ミリサイズの多くの穴を持つ「多孔性材料」。古川准教授らは、多孔性材料に圧力を加えたり温度調整をしたりして、メタンや二酸化炭素、一酸化窒素などの物質を分離、吸収する研究をしている。ただ、医療研究のため一酸化窒素などを細胞に取り込もうとしても、物質に高圧力や高温度を加える過程で細胞が死んでしまう難点があった。

 研究グループは今回、光のエネルギーで一酸化窒素を放出する多孔性材料を開発。材料の上に、一酸化窒素に反応すると緑色に光る細胞を並べ、光を放射する実験をすると、細胞だけ緑色に光らせることに成功した。

 古川准教授は「一酸化窒素を細胞に取り込むことが実用化すれば、神経細胞の情報伝達や細胞分化の研究に役立つのではないか」と話している。
ーーー中日新聞(25.10.26)






北川進拠点長、第10回江崎玲於奈賞を受賞(25.9.5)

茨城県と財団法人茨城県科学技術振興財団は9月3日、北川進京都大学物質-細胞統合システム拠点(iCeMS=アイセムス)拠点長・教授にExtenal Link第10回江崎玲於奈賞を贈ると発表しました。この賞は日本国内の研究機関においてナノサイエンスあるいはナノテクノロジー分野に関する優れた業績を挙げたものに贈られます。北川教授の「革新的な多孔性金属錯体の開発」が高い評価を得ました。授賞式および受賞記念講演会は2013年11月26日につくば国際会議場で開催される予定です。

 今回の受賞に対し北川教授は以下の様にコメントしています。

「分子、金属イオンを用いて自在にナノ空間を設計して新しい多孔性材料を作る私どもの成果が評価され大変名誉なことと喜んでおります。これもひとえにご指導いただいた先生方、ともに苦労してきた共同研究者、学生諸君の才能と汗の結晶と思います。心より感謝しております。最近のシェールガス革命に代表されるように今世紀はまさに気体の時代です。小分子気体はエネルギー(メタン, 水素, など)、環境(二酸化炭素,イオウおよび窒素酸化物など)、生体(酸素、一酸化窒素など)、資源(炭素は二酸化炭素、空気中の窒素、水の水素など)のあらゆる分野に関わる重要な物質です。その分離、貯蔵、変換を自在にすすめる上でも本多孔性材料は重要な役割をするものと大変期待しています。」
---京都大学、細胞統合システム拠点(25.9.5)






首都大東京、多孔性セパレーター使いエネルギー密度2倍の二次電池(23.1.25

首都大学東京の金村聖志教授らが開発した多孔性セパレーター [μmは、マイクロメートル]

(=写真)。正極と負極を隔てるセパレーターに直径250ナノメートル程度の穴の開いた多孔性材料を採用。エネルギー密度が従来のリチウムイオン二次電池の約2倍となる、1キログラム当たり310ワット時の二次電池の試作に成功した。電気自動車(EV)に搭載した場合に、東京-大阪間を1度の充電で走行できるように改良を進める。
ーーー日刊工業新聞(掲載日 2011年1月25日)





新しい多孔性材料によりアルコールから電気エネルギーの取り出しに成功(22.6.14)

九州大学、旭化成株式会社は共同で、新しい多孔性材料による電極触媒の開発と理論的機構解明に世界で初めて成功しました。今回開発された電極触媒は白金などの貴金属を使用していないことから、安価な電極触媒の開発につながるものと期待されます。これは、北川 宏 教授(京都大学、平成22年3月まで九州大学 招聘教授)、古山 通久 教授(九州大学 稲盛フロンティア研究センター 次世代エネルギー研究部門)、木下 昌三 主幹研究員(旭化成株式会社)らによる共同研究の成果です。


規則正しいナノ細孔を有するルベアン酸銅RdtoaCu(R=HOC)は、エタノール分子(COH)を吸着し、低電位でエタノールをアセトアルデヒド(CHCHO)に酸化して、高効率に電気エネルギーを取り出すことができる。

活性炭に代表される吸着剤は、分子を取り込み吸着する役割を果たす物質であり、物質内部に多数の小さな穴(細孔)を有することから「多孔性物質」と呼ばれています。活性炭やゼオライトに比べて高いガス選択吸着性を示す「多孔性金属錯体」は、高効率分離・濃縮機能を有する多孔性物質として90年代後半から注目され、世界中で研究開発が進められています。特に最近では、COを選択的に高効率で吸着する多孔性金属錯体がいくつか開発され、それらの特異な柔軟構造により脱着時のエネルギーが少なくて済むことから、炭酸ガス削減技術の観点からも注目されています。他方、この材料を燃料電池などの電極触媒(電極上で化学反応を活性化させる物質)に応用する技術にも関心が寄せられていますが、これまで、電極触媒活性を示す多孔性金属錯体の開発には誰も成功していませんでした。

上記研究グループは、今回、エタノールから極めて低電位で電気エネルギーを取り出す多孔性金属錯体の開発に成功し、精密な計算化学によりその吸着機構と触媒機構を明らかにしました。この研究成果により、安価な非白金系電極触媒の開発やバイオマスを原料とする燃料電池等の開発が大きく加速することが期待されます。

なお、本研究は、科学技術振興機構(JST) 戦略的創造研究推進事業 チーム型研究(CREST)の研究領域「ナノ界面技術の基盤構築」における研究課題「錯体プロトニクスの創成と集積機能ナノ界面システムの開発」(研究代表者:北川 宏)、及び九州大学と旭化成株式会社とが進める共同研究の一環として、同大学において実施したものです。

本研究成果に関する原著論文は、ドイツの科学誌である「Angewandte Chemie International Edition(応用化学誌 国際版)」のオンライン速報版で近日中に公開されます。
ーーー九州大学(平成22年6月14日)





2人の「京大・北川教授」が相次ぎ開発 CO2吸収材に注目(22.7.5)

 「多孔性金属錯体(PCP)」と呼ぶ材料が今、世界中で注目されている。地球温暖化の元凶ガスである二酸化炭素(CO2)を吸収する特性を持つPCPが相次いで登場したからだ。開発したのは京都大学の2人の北川教授。それぞれ実用化を目指して研究に取り組んでいる。

京都大学工学部の北川進教授
京都大学工学部の北川進教授

 PCPは金属と有機物でできた物質で、数個の分子が入る程度の微細な穴が規則的に開いている。酸素の濃縮や化学反応の触媒など様々な用途が期待されており、学術論文の発表件数は年間2000件以上という。

 研究が盛んなPCPへの注目がさらに増しているのは日本発の成果のためだ。京大工学部の北川進教授は科学技術振興機構(JST)のプロジェクトで空気の中からCO2を優先的に取り込み、簡単に放出・回収できるPCPを開発した。この材料は、イソフタル酸とビピリジンという2種類の有機物を金属の亜鉛でつなぎ、ビルディングのような構造が特徴だ。

圧力で伸縮するPCPのイメージ。柱がビピリジン、仕切り板がイソフタル酸でできており、亜鉛がつないでいる(北川進京大教授提供)

 ビルの柱に相当するビピリジンが大気圧では縮まり、ビルは押しつぶされているが、圧力を最大10気圧に高めると柱は約0.4ナノ(ナノは10億分の1)メートルに伸びて小さな部屋ができる。このPCPに酸素と窒素、CO2を同量混ぜたガスを当てたところ、CO2だけを部屋に取り込んだ。圧力を大気圧に戻すと部屋は縮まってCO2を放出するので分離・回収できる。成果は今年5月、英国王立化学会の論文誌に掲載され、世界が注目するところとなった。

 PCPの中では、吸収したガスの分子とPCPの分子との間で「ファン・デル・ワールス力」という弱い分子間相互作用が働く。沸点が高いガスほどこの力が強くPCPに吸着されやすい。沸点はCO2が絶対温度195度、酸素が同90度、窒素が同77度。「この違いでCO2だけを分離できた」と北川工学部教授。

 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のプロジェクトでは企業と実用化の研究にも着手した。参加するのは昭和電工と東洋紡、昭栄化学工業(東京・新宿)、JX日鉱日石エネルギー、住友化学。「JSTのプロジェクトで得られた基礎的な成果をうまくNEDOの応用研究につなげられた」という。

京都大学理学部の北川宏教授
もう1人の研究者は、京大理学部の北川宏教授(3月まで九州大学教授兼任)。やはりJSTのプロジェクトでPCPの薄膜を作ることに世界で初めて成功した。このPCP薄膜は銅とコバルト、有機物からなる。膜の厚さは数ナノメートルで、中に内径0.5~1ナノメートルの穴が開いており、まるでジャングルジムのようだ。CO2を吸収するだけでなく、水素を一緒に加えると有用な化学品を合成できると考えている。

 穴の大きさは分子数個がやっと入れるほどで、ここが微小な“反応容器”になる。穴の中にCO2と水素が吸い込まれ、そこに電気や光などでエネルギーを与えると、炭素と水素、酸素からなるアルコールなどの化学品を合成できそうだという。

PCPの薄膜でCO2からアルコールができるイメージ(北川宏京大教授の研究)

 すでに2009年度からNEDOのプロジェクトでPCP薄膜の実用化研究がスタート。クラレと昭栄化学、昭和電工、東洋紡と共同研究に取り組んでいる。「社名は明かせないが、ほかに何社も大手企業から問い合わせを受けている」と北川理学部教授は説明する。

 NEDOの試算では、この膜を国内の化学プラントで使えばCO2を年間50万トン削減できる。現在は化学プラントで発生するガスからCO2を分離するのにアミン系溶液で吸収する方法などを使うが、「新開発の膜に変えれば分離に必要なエネルギーが減り、CO2の排出を大幅に減らせる」(NEDO環境技術開発部)

 産業活動によって大気中に排出されるCO2の削減は世界的な課題になっている。対策としてCO2を回収して地中や海底などに捨てる「CCS」技術の開発が進むが、CO2を積極的に活用する方が場所や空間を必要としないので有効という見方がある。

 「工学部の北川教授とは親せきではないが、密に連絡を取り合っているし一部の研究は共同で進めている」と語るのは理学部の北川教授。日本発のPCPが温暖化対策の切り札になるか。2人の北川教授の取り組みから目が離せない。
ーーー日経新聞(2010/7/5 )





多孔性材料の技術革新と実用化への道





“気体の錬金術”。夢を現実にするナノ空間材料(23.2)

環境、資源、宇宙、生命、エネルギーなど多領域への応用が期待されるナノサイエンス。なかでも今、「多孔性配位高分子(PCP)」と呼ばれる新材料の研究が世界中で活発化し、実用化も進んでいる。PCPとは有機配位子と金属イオンからなる均一の細孔を持つ物質のことで、少ないエネルギーで効率よくガスを分離貯蔵濃縮できることなどから、今後気体を自在に操るカギとなる可能性を秘めている。この領域を牽引しているのが日本人研究者、京都大学 物質-細胞統合システム拠点 副拠点長の北川進教授だ。

北川氏が同研究のコンセプトをまとめた2004年の論文の被引用数は、過去6年間で3000近く(2011年1月現在)を数え、そのほかの論文も総被引用数トップ1%にランクインするなど、頭抜けたインパクトを世界に与え続けている。その実積から、2010年には、「トムソン・ロイター引用栄誉賞」を受賞。さらなる研究を押し進める北川氏に、その研究内容及び今後の発展性などについて聞いた。

—北川先生は、2010年9月、「トムソン・ロイター 引用栄誉賞」(注1)に選出されました。この賞は、「近い将来ノーベル賞を受賞される可能性のある、それだけの研究成果が引用から認められる研究者」をノミネートするもので、いわゆるノーベル賞受賞者予測とも目されています。この授与について、どのようにお感じになられましたか?

北川氏…僕は今まで、自分で新しい領域を作るというスタンスで研究に取り組んできました。ですから、ゼロから仲間と築いたそのフィールドが注目されるようになったのは素直に嬉しく感じています。ところで、引用栄誉賞の選出根拠にある、「引用その他」の“その他”とはどういうことですか?

—トムソン・ロイターには、ディビッド・ペンドルベリーという引用分析の専門家がいます。彼が毎年候補者を選出しているのですが、最初にノーベル賞分野において高い被引用総数を誇る研究者を世界中から選びます。そしてその研究内容がフロンティアであり、その研究者が先駆者であるか、その論文に続く論文がどういう成長を見せているかなど周りの情報も加味して絞り込んでいきます。コアはもちろん引用分析ですが、国際的な賞の受賞実積等も参考にしていることから、「引用その他」と表現しています。

北川氏…なるほど。よく分かりました。

—ペンドルベリーが今回北川先生を選出した理由は、化学や材料科学分野における多孔配位高分子の研究が引用からみて急速に成長していることです。その中で北川先生は、同系の研究を行っている米国オマー・M・ヤギー氏と並んで、研究の先頭を走るパイオニアでいらっしゃいます。2004年にAngewandte Chemie International Editionに発表された先生のレビュー論文は、過去6年間で3000回近く引用され、大きな影響力を持つ論文になりました。また、北川先生は、直近10年間だけでも26報の高被引用論文を発表されています。これは、全科学者中でも非常に高い数値です。先生の総被引用数を総論文数で割った1論文あたりの平均被引用数、いわゆる被引用インパクトは、過去10年のデータで化学領域中7位(注2)です。あらゆるデータが、北川先生が世界のトップにいらっしゃることを示していました。

被引用数順に並べた北川氏の論文リスト:ReseracherIDより

被引用数順に並べた北川氏の論文リスト:ReseracherIDより

北川氏…根拠が明確ですね。日本の化学には少し前までこのような統計値によるインデックスがなく、世界的権威のジャーナルにどれだけ論文を掲載したかが基準でした。リアルな影響力を示すトムソン・ロイターの指数は研究者の学びになります。ただし、気をつけねばならないのは、活発な分野に参入していくと引用が増えやすいということです。どうせ挑むなら、できるだけ未開拓の分野に挑戦した方がいい。私は有機化学の本流ではなく、ノーベル賞を受賞された福井謙一先生の物理化学系の流れですが、当時そこはすでに大きな領域でしたので、敢えて自分でやらない限り広がらない狭間の錯体化学を始めました。

—米国のオマー・M・ヤギー氏とは、偶然同じようなご研究を?

北川氏…ええ、歴史は不思議です。たまたま同じ時期、非常に似たことを研究し始めていました。1995年、ヤギー先生は米国化学会誌JACS(The Journal of the American Chemical Society)で金属錯体からつくられるネットワーク骨格をもつ化合物群を「Metal-Organic Framework (MOF)」と名付けました。僕が呼称している“PCP”と基本的に同じ物質です。後にこの骨格を持つものの中に、 “porosity(多孔性)”を持つものが多く現れ、MOFまたはPCPが多孔性金属錯体の代名詞となりました。ところでヤギー先生がJACSに発表したときは、彼はまだナノサイズの空間が活用できると実証できていなかった。その後、1997年、僕がドイツ化学会誌 Angewandte Chemie International Editionで、結晶中のナノサイズの空間にある溶媒分子を室温で完全に除いて、そこにガス分子を出し入れできることを実証するとともに“すべて除いても壊れないもの、すなわち金属錯体においても多孔性が存在する”ことを示したわけです。すると世界の研究者が、有機分子を用いた結晶(金属錯体は有機分子を用います)でもナノサイズの空間を自由に使える、これは面白そうだと続々参入してきて領域が一気に活発化した。当時はちょうどエネルギーや環境問題、つまりメタンや二酸化炭素が注目され始めた頃で、それらも勢いを後押しした要因だったと思います。

ヤギー氏と北川進氏
ヤギー氏と北川進氏

—なぜ、北川先生は多孔性の発見という成功に至ったのでしょう?

北川氏…そもそも孔のある金属錯体にガスを出し入れしようと誰も考えなかったのでしょう。むしろ、研究者は金属イオンと有機分子でできた“骨格の面白さ”にはまります。構造の美学のようなもので、たとえばダイヤモンドなど炭素原子が組み上げる自然構造を再現することなどにのめりこんでいく。僕も最初はそうでしたが、ある時、企業の方に「活性炭みたいな吸着体はできませんか?」と尋ねられ、それがこの研究を進めるきっかけになりました。

僕の座右の銘に、2400年前の荘子の「無用之用」という言葉があります。「役に立たないと思えるものも実は役に立つ」という意味です。たとえば、何でもない立方体も、その枠内を「空間」と考えると役立つかもしれないという発想です。われわれの研究原点も「空間とは単に何もない空隙ではなく機能の宝庫である」という立場に立っています。地球上であれば、そこには分子やイオンがある。空間を様々な材料で仕切ることにより、今まで知られていなかった構造ができあがります。すると、中の分子やイオンが外から影響を受けて変化し、結果、従来反応しなかったものが反応し始める。そこに新しい化学が生まれるわけです。20世紀は化学が飛躍した時代でしたが、注目を集めたのは“フレームワーク”、つまり骨格でした。しかし、これからは、まさに荘子が言ったように「重要でないと考えられていたことも、実は重要である」つまり、「空間は機能の宝庫である」という視点が必要だと考えます。

多孔性の概念

多孔性の概念

そういう意味で“多孔性”という概念を錯体材料に導入したことが僕とヤギー先生の最大の功績かもしれません。金属錯体結晶に“Porosity(多孔性)”という概念を導入した代表的物質を発表した1997年以降、この領域は急激に活性化し、情報が混乱しました。そこで一度整理しようと考え、2004年に本研究の基本コンセプトをまとめたのです。

—素晴らしいですね。多孔性配位高分子に関わる先生のご研究は大変画期的で、私達の生活に密接にかかわる部分が多いといわれています。「夢を現実にする空間を化学する」という先生の研究についてもう少し詳しく教えてください。

北川氏…要は“気体”です。僕が研究しているのは気体をいかに自在に扱うか、つまり“気体制御法の探求”です。酸素、二酸化炭素、窒素、メタン、水素などの気体は、エネルギー、環境、資源、生命、宇宙など、あらゆる分野に関わる重要な物質です。環境でいえば二酸化炭素の削減は地球温暖化防止に欠かせないですし、窒素酸化物など空気を汚染する気体もそう。宇宙空間や人類が生きるためには酸素が不可欠です。大量にあるメタンの有効利用や、次世代エネルギーとして期待されている水素の効果的な分離、貯蔵、変換ができれば、気体を中心とした技術で、資源枯渇、エネルギー大量消費問題に悩まされなくなる。

そして非常に重要なのが炭素資源です。なかでも化石資源である石油代替の資源を産み出す分野は、世界的に早急な革新的技術を切望されています。この問題を解決する有望なものに、二酸化炭素とメタンがあります。ともに気体材料です。実は、気体を有用な物質に変換する技術について、素晴らしい成果が20世紀の初頭(100年前)にありました。現在、肥料製造の大部分において原料となるアンモニアを合成するためには、一世紀以上前に発明された窒素ガスを原料とする“ハーバー・ボッシュ法”(注3)という工業的技術を用いています。空気から役立つものを作るサイエンスとしてアインシュタインに並ぶ偉大な業績ですが、高温、高圧の条件でアンモニアを製造するため、大量のエネルギーを消費するという欠点があります。100年前は、大量のエネルギーを消費して無理矢理作るという技術でよかったのですが、現在は、二酸化炭素の大量排出やエネルギーの大量消費問題など、かつてと状況は大きく異なります。どこにでもある資源(すなわち空気や水)を用いて、低エネルギーで有用なものを合成するサイエンスと技術が必要です。

そこで我々が実現させようとしているのが、まさにハーバー・ボッシュに継ぐ“第二期の気体の錬金術”です。常温の環境下で空気から、窒素や二酸化炭素、酸素を効率的に分離する。そして保存、運搬のために安定に大量貯蔵し、触媒を用いて必要な材料に変換する技術が求められます。特に変換では気体原料が高速で反応するため、圧力をかけずに高濃度の状態を実現することが必要です。まさに分離、貯蔵、変換を行うことによる“ガスを自在に取り扱う”夢のような技術は、多孔性材料を用いることではじめて実現できるはずです。世界にあまねく平等に存在する空気を資源とする技術、大量に存在するメタンを用いるサイエンスは、石油に変わる革命的な技術になり得ます。

配位空間の機能
配位空間の機能

—夢のようなお話ですが「夢を現実にする。空間を化学する」というコンセプトにぴったりですね。ヤギー氏とは、まったく同じご研究なのでしょうか?

北川氏…同じ方向性ではありますが、ひとつだけ僕しかできないことがあります。それは無機物にはない柔らかい多孔性錯体材料を見つけたことです。多孔性配位高分子を用いて柔軟な空間を持ち、気体の圧力、光、温度などの外場に応答して構造、機能を変えるソフトな多孔性結晶材料を実現しました。今、ある企業と実用化を進めていますが、これにより多孔性物質の用途を飛躍的に拡大することができます。ほかにも、この領域には、まだまだ無限の可能性があります。さらに、興味があるのは軽金属元素です。地球に大量に存在するアルミニウムのような軽金属元素などです。この金属元素イオンを用いて機能性材料を作り出していけば、資源枯渇問題を回避できます。ヤギー先生はゼオライトや活性炭などの“従来材料を超える機能”を作り出していますが、僕は“従来材料にない機能”を追求しているのです。

—素晴らしいご研究ですね。発展を心より応援しております。北川先生の論文がどのような国の人に引用されているかResearcherIDで調べると、中国科学院(Chinese Academy of Science: CAS)での引用が顕著です。共同研究はされていないと伺っていますが、これについてはどのようにお考えですか?

北川論文の被引用マップ:ResearcherIDより
北川論文の被引用マップ:ResearcherIDより

北川氏…PCPの研究領域が実用に直結するからでしょう。中国は、アメリカ同様、非常に合理的な国民性なので実用化に繋がりそうな研究には一気に参入してきます。中国では、公害対策など、この技術を活かして課題すべき問題が山積みですから、この領域が特に高く評価されているのでしょう。そうやって見ていくと、ResearcherIDは研究を戦略的に進めるのに役立ちます。例えば、自分の論文があまり引用されていない国や地域はどこか? そこには競争相手がいるのか? 引用されない理由が何かあるのか、と追求することができますね。また、大抵の研究者は自分が開発したフレームワークに名前をつけますが、そういう分布もすべて分かります。世界の研究者が発表する研究が、どのように広がっているかを分析することで、今、どこの誰が何に興味を持っているのかが把握できる。敵を知る、あるいは共同研究者を探す術にもなります。こういう分析は若い人こそ積極的にしていった方がいい。今後、自分達がどこに進んでいくべきかを探るカギとなるでしょう。

—先生は、新規開拓や国際的なアプローチをどのように行うのですか?

北川氏…大きな国際会議には必ず出席し、学会などで開拓したい地域の研究者とのコネクションを探します。研究領域を発展させるには「広げていく」という意識をもつことが大事です。

—Web of ScienceのCitation Map機能では、引用文献をビジュアライズして表示することができます。2004年のレビュー論文の引用文献は456。著者や分野、年代別に表示することもできます。

Functional porous coordination polymersの年代別citation map”Functional porous coordination polymers”の年代別citation map。1898年からの論文を引用していることがわかる。

北川氏…これは非常に面白い。我々研究者にとって論文を投稿するための戦略は非常に大事です。ひとつには、いい論文を書くこと。そして、もうひとつは、インパクトファクターが高いトップジャーナルに論文を掲載すること。良い論文を書くためには、その領域に関する文献をできるだけ万遍なく引用していることが大事です。考えてみれば当然のことですが、例えば僕の分野の論文であれば、ジャーナルの編集者から僕に論文のピア・レビュー依頼が回ってきます。その時、自分と近い分野にも関わらず僕の論文がまったく引用されていなかったら少なからず疑問を持つ可能性もありますね。ですから、学生にはいつも「科学者として、その分野のバッググラウンドをしっかり理解した上で自分が優れている点を証明しなさい」と言います。引用文献に偏りがなく、オリジナルもきちんと引用しているのは重要です。歴史を振り返り、その背景を知る。研究者の良心として、自分のいい所を出すためには過去もきちんと包括することです。

—なるほど。Web of Scienceは過去100年間の引用データを保有していますが、研究者にはお役にたちますか?

北川進氏

北川氏…非常に役立ちます。先ほどもいったように、僕ら研究者は論文を書く際、歴史を遡ってその領域に関する文献を万遍なく引用していく。歯抜けの引用を持つ論文がいい論文のはずがありません。また、オリジナリティを尊重するというのは、誰が最初に、どういうコンセプトをだしたかということを明確に示すということです。オリジナリティを認めて、自分がどこの位置にあるかということを研究者として常に意識し続ける。これは非常に重要です。

—近年、「日本人が外に出ない」「海外との共同研究が少ない」などと言われていますが、実際、先生の目からみてどうでしょう? これからの研究者へのメッセージ、また研究者を育てる試みを教えてください。

北川氏…やはり海外に出てほしいですね。特に東大や京大など有名大学の研究者は、それが使命です。僕が学生時代からいわれてきたことは、「学会でどういう意識を持つのか」、ということです。仲間ばかりいる同窓会ではなく“feel alone”になってほしい。誰も知らない、専門用語も分からない、言葉さえ分からない。そんな環境に身を置くということは、すなわち新しい領域に自分がいるという指標です。アメリカは、英語が話せて当たり前という文化があるから最初はきついかもしれないが、怖がる必要はありません。東大や京大の学生は、もともと言われなくても勉強します。だから半年くらいで力がつき、自信がついて、友達もでき、すべて成功するでしょう。精神的に多少追い込まれるのも良い勉強です。もうひとつ重要なのは、海外で色々な人物と会ってくることです。同じ釜の飯を食うといいますが、一年一緒なら30年後にあっても「やあ」のひと言で話せる関係になる。良いパイプを持つことが学問においても非常に重要です。帰国後の就職先やポジションを心配する研究者もいますが、「そんな心配はせんでいい」と伝えています。会社もそうですが、やるべきことをきっちりとやって堂々としたらいい。与えられた研究をしっかりやれる研究者は必ず見出されますから。

渡辺麻子

—最後になりますが、トムソン・ロイターのレポートでも、最近研究の中心は欧米からアジアへシフトしつつあるという結果が出ています。アジアで日本はリーダー的存在でしたが他国の台頭が目覚ましくなってきている。今後、学生の留学先として中国は選択肢に入りますか?

北川氏…化学分野においては、まだ数年先のことではないでしょうか。設備面で一部素晴らしい研究機関もありますが、これからだと思います。ただ、5年程前に錯体化学会で、錯体化学の領域に関する発表論文について、世界的なジャーナル、例えば”JACS”や”Nature”、“Science”などを調べてみたところ、インパクトファクターが高い総合誌には日本の方が論文を多数発表していましたが、錯体化学および無機化学分野の専門誌では、のきなみ中国に抜かれつつありました。結論として、サイエンスクオリティーはまだ日本の方が中国より高い部分もありますが、分野によっては中国が追いつき、追い越している。つまり、日本の無機化学研究自体が衰退の道を辿っていると分析しました。

実際、東大や京大は国から潤沢な資金を投資されている一方、地方大学は競争的資金に移行したため経常費が1/10と削減しています。コピー代も出せず困窮する教授さえいる状況です。これが、今の日本の最大の問題でしょう。ちなみに、上記のジャーナル分析をした時は担当者が一冊々手作業で調べていったのですが、こういう統計資料も簡単にできますか?

—手作業は大変ですね。Web of Scienceがお手伝いできます。

北川氏…それは非常に活用度が高い。Web of ScienceやWeb of Knowledgeなどデータベースから導かれる明確な統計分析は、今の時代、企業、パートナー、政府など、あらゆる機関に向けたプレゼンなどアウトプットに非常に有効です。今、僕は第4期科学技術基本計画に向けたコメントなど様々な方面から意見を求められているのですが、そういう場でも説得材料に学術的な論理的数値が不可欠といえます。使い手次第では、日本の研究未来を支える重要な一端を担うでしょう。

—ありがとうございます。今後も先生のご活躍を心より応援しております。

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注1:トムソン・ロイターの学術論文データベース Web of Scienceの引用その他から導き出される客観的なデータを基に、同社アナリストのディビッド・ベンドルベリーが毎年ノーベル賞に匹敵する研究者を選出している。

注2:Web of Scienceの、過去10年で200報以上の化学論文を発表した研究者データより。

注3:“ハーバー・ボッシュ法”とは、鉄を主体とした触媒上で水素と窒素を500℃、200気圧付近の超臨界流体状態で直接反応させ、アンモニアを生産する技術のこと。


北川 進(きたがわ・すすむ)氏

略歴
1974年 京都大学工学部石油化学科 卒業
1976年 京都大学大学院工学研究科 石油化学専攻修士課程修了
1979年 京都大学大学院工学研究科 石油化学専攻博士課程修了
1979年 京都大学工学博士
1979 -1983年 近畿大学理工学部 助手
1983 -1988年 近畿大学理工学部 講師
1988 -1992年 近畿大学理工学部 助教授
1992 -1998年 東京都立大学理学部化学教室 無機化学第一講座 教授
1998 -2007年 京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学専攻 教授
2007年 ‐現在 京都大学 物質-細胞統合システム拠点(iCeMS) 副拠点長および
京都大学大学院工学研究科 合成・生物化学専攻(兼任) 教授
受賞歴
2002年 第19回日本化学会学術賞
2007年 Earl L. Muetterties Memorial Lectureship, University of California, Berkeley
2007年 平成19年度錯体化学会賞
2008年 Humboldt Research Award, Alexander von Humboldt-Foundation
2009年 第61回日本化学会賞
2010年 トムソン・ロイター引用栄誉賞

---トムソンロイター(2011年2月掲載)








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